あなたにとって仕事のやりがいとは？ – 目の前の人に感謝の心を伝えて、春に花を咲かせましょう

あなたの思う「仕事のやりがい」は何ですか？忙しい毎日に追われて、感謝の心を忘れていませんか？今回は、外資系ラグジュアリーブランドの人事部長などをご経験されてきた転職コンサルタント、Chikuma Human Resource.Instの竹間さんのコラムをお届けします。

人生経験の中で得られる「感動」こそが、仕事のやりがい

あなたは「仕事のやりがい」をどのようなところに感じていますか？お客様の笑顔を見ること、成果を残すこと、それとも……報酬が貰えることでしょうか。私は、人生経験を積み上げていく中で得られる感動こそが、仕事のやりがいだと考えています。

ファッションの話からは少し離れてしまいますが、先日、海外球団からの高額オファーを断って、古巣である日本の球団、広島カープに戻った黒田博樹選手の行動が「素晴らしい」と各メディアで絶賛されていました。そんな黒田選手が、メジャーリーグのヤンキースで活躍していた2012年のスプリングキャンプで、好きな言葉を聞かれた際に選んだのが、西郷隆盛が詠んだ漢詩の一節「耐雪梅花麗」（雪に耐えて梅花麗し）でした。

この漢詩は「梅の花は、寒い冬を耐え忍ぶことで、春になれば一番麗しく咲く」という意味で、冬の厳しい雪や寒さに耐えた梅の花が、春になって一層美しく咲く様子を表現しています。英訳すれば「Plum trees bloom most beautifully as they stand and overcame the cold severe winter」。黒田選手は「苦しまずして、栄光なしという考え方。それを最初に知ったのは高校のときかな。」と説明しました。人も梅と同様に、寒く厳しい冬、つまり辛い試練を乗り越えてこそ大成することができるのではないでしょうか。

「仕事のやりがい」というものは、捉え方次第で、どんな職場でも見つけられると思います。働く上で最高の環境というのは、まず仕事自体にやりがいや責任があり、充実感を感じることができ、その上休日も取得でき、なおかつ給与も満足がいく、といったような状況でしょうか。でも、正直そんな環境をかなえるのは、とても難しいのが現実です。特に、高い給与を得ることができるようになると、自分の仕事を通して、それ相応の責任を果たすことが求められます。そこには大きなプレッシャーがつきものです。ストレスを感じることも多くなってしまうでしょう。

私は仕事をしていく上で重要なのは「（社会人として）何を大切にしていきたいか」を忘れないことだと考えています。私の場合は、まず「健康」でしょうか。仕事のせいで、体調を崩してしまうことだけは避けたいと思っています。誰も責任をとってくれない、私だけの体ですからね。そして、仕事以外で自分が楽しめる時間や場をどれだけ持てるか、ということも大切にしています。もちろん”仕事以外で”ですから、ある程度、仕事の仕方を割りきらないといけない場面もでてきます。これは本当に難しいことです。私自身、人間ですから、出世欲や見栄、思い描く理想と現実の間で、悩んでしまうこともまだまだあります。

お金では買うことのできない、人間関係や人生経験を大切に

某ラグジュアリーブランドで人事部長として働いていた前職時代の上司は、イタリア人でした。イタリアのとある労働組合のトップにおり、イタリアのファッション界を古くから見ていらした方でした。彼は私に「欲を出した仕事はするな！」と常々言っていました。「今の給与に甘んじた仕事をしてはいけない。大事なのは、一緒に働いてくれている”現場スタッフへの愛情”である。」「現場スタッフへの愛情と誇りを持って仕事をしていれば、後世まで君の名前が残っていく。人が働く姿というのは、必ず誰かに見られているもの。職場だけではなく、家庭にも伝わるものなんだ。その心は、いずれ君の子どもへ、孫へ、ひ孫へと伝わっていくだろう。」と語ってくれました。お金よりも名誉よりも、「人との繋がり」という”根”を張ることができた時に、花咲くことができる、ということを彼から学びました。

お金というものは、たくさんあるに越したことはないけれど、正直なところ、どうにかなるものだと思っています。一方で、友人との時間や人生経験は、お金では買えないものなのです。

「あなたと会えて、良かった。」―人間関係で言えば、仕事も恋も同じ。一方が他方に与えるだけの関係は長続きしません。お金と商品、お金と情報、お金とサービス……みんなそうです。お互いが納得をした上で情報交換します。そこに欲望が適うのです。そのためには、自分自身が高性能、高品質でなければなりません。自分に相手を幸せにする能力があるから、自分も相手に要求ができるのではないでしょうか。

あなたは、あなたの大事な人に、自信を持って「ありがとう」と言えていますか？そこには、お金よりももっと「幸せな春」があるのではないでしょうか……春に美しく咲く花々を見て、思い出して欲しいなと思います。