アパレル・ファッション業界の求人・転職ならFashion HR

記事一覧

現役百貨店マンに聞く!ベールに包まれた「百貨店外商員」のお仕事とは

ところで、百貨店の外商部って何をしているの?と、改めて百貨店の外商部の存在が気になったFashion HR編集部。「外商がつくと、自宅にお品物を届けてくれる……らしい」などという話を耳にしたことがある方は多いかと思いますが、ベールに包まれたそのお仕事の実際について、今回は特別にご自身も外商部員経験のある、某有名百貨店にお勤めの方にお話をお伺いすることが出来ました。

4842

現役百貨店マンに聞く!ベールに包まれた「百貨店外商員」のお仕事とは

―「外商部」というと、上顧客のご自宅に伺って商品を売る、などというイメージがあるのですが、実際にはどのようなお仕事なのでしょうか?

そのイメージは間違いではありませんが、外商部の仕事内容を知って頂く前に、まずはかつての百貨店の姿を知っていただく必要がありますね。 現在では化粧品や高級ブランド、宝飾などのファッション関連商材を扱うお店というイメージがあるかと思いますが、百貨店は、身近な生活雑貨から、衣類、宝飾、家具・家電、仏具まで、名前の通り「百貨=なんでも揃う」お店だったのです。そんな百貨店の在り方は「ゆりかごから棺桶まで」と例えられていることもありました。中でも、「ご褒美」を得意にしていたのが、外商部員です。 「ご褒美」とは

  • 呉服
  • 宝飾
  • 美術品

の頭文字を取っています。 また、外商部にも「個人外商部」と「法人外商部」があり、それぞれで全くお仕事内容が変わります。 法人外商部は名前の通り、法人様へお伺いさせていただく外商員の部隊です。お歳暮などギフト需要が中心ですね。

外商部員は「お客さまの御用聞き」?

外商部員の数は百貨店の規模によっても異なりますが、数百人程度。その百貨店の本店に配属されることがほとんどです。

中心となる年齡層は50代くらいでしょうか。外商部はバブル期、特に規模が拡大した部署でしたので、当時外商部の新入社員として入社した社員は未だ外商部員として働いているパターンが多いです。そのため、若い世代は殆どおらず、30代が十数人いるかどうか。ですので、今回放映のドラマのように「店頭の販売員から突然の異動で、外商部員に!」というパターンは、かなり稀なことかと思います。突然外商員になったとしても、ものになるまで10年くらいはかかります。外商部の規模自体、バブル期と比べると今は40%くらいに小さくなってしまいましたしね。

みなさんが抱いていらっしゃるイメージの通り、外商員の仕事は「お客さまのご自宅に伺って商品を売る」ということに間違いはないのですが、お客様とのお付き合いは非常に濃密なものです。顧客のご一家全員の誕生日やお祝いごと、記念日はもちろん、趣味嗜好、ご購入履歴まで全てを把握して、お客様の御用聞きに徹します。信頼性が構築できれば「あなたが良いと言っているなら、買っておくわ。」と、言ってくださる方もいらっしゃいます。もちろん、外商員はお客さまに呼ばれれば、平日も週末も関係ありません。お客さまはそんな身を粉にして働いている外商員の姿を見て、お金を落としてくださるという面もありますね。

今ではこんなことも減ってしまいましたが、20年ほど前、顧客のご子息がご結婚されるとなれば、外商員は婚礼家具一式(家具、家電から自転車などまで全て)を手配し、トラックに積み込み、トラックを運転して新居にお届けし、開梱、レイアウトまで、その段取りを全て担当させていただくことが普通でした。ご一家のライフイベントには必ず同席させていただいて、御用聞きをする。もちろん日常生活でも(極端な例ではありますが)「トイレットペーパーがそろそろ無くなる頃だな……」とお届けすることもありました。今ではトイレットペーパーは百貨店に取り扱いすら無いでしょう(笑)。

このように、外商員はかなりハードなお仕事です。だからなのか、外商部員は男性が殆どですね。

外商顧客は代々お付き合いをさせていただいているご一家、またはそういった方のご紹介がほとんど。

―ちなみに「お客さま」はどのような方たちなのですか……?

大企業の関係の方、地主の方が中心ですね。あとは店頭でお買いものがしづらい方……議員の方なども多いです。

―どうやったら、「外商顧客」になれるんでしょうか。噂で「年間に数百万購入すれば、お声が掛かるらしい。」という話を耳にしたことがあるのですが。

百貨店によって基準は違うかと思いますが、単純に購入金額が多い、収入が多い、というだけでは難しいでしょう。

現在の顧客は代々外商部員がお世話させて頂いているご一家、またはそのご紹介という方がほとんどです。 かつては、役所に伺えば納税金額を見ることができたので、「沢山税金を収めている方」が良いお客さまだとされていました。今はそんなデータも見ることができなくなってしまったため、年収は自己申告ですので、社会的地位が重要視される傾向にありますが、新しく外商顧客になるということは今ではかなり難しいかと思います。

また、外商は基本的に「掛売」のビジネスですので、外商員は月末にお客さまの元にお伺いして売上を回収させていただくんです。つまり、お客さまとの信頼関係が築けなければ外商は成り立ちません。バブルが崩壊した時、百貨店によっては売上を回収できない焦げ付きが多く発生して、大きなダメージを受けてしまったという話も耳にしました。こんなご時世ですので、百貨店側も顧客選びに慎重になっているのかもしれませんね。

201

―収入があるからといって、そう簡単に外商顧客になれるわけではないんですね。ちなみに、外商では高額な商品を多く取り扱われていると思うのですが、今の百貨店売上において、やはり外商員の存在は大きいのでしょうか?

外商員1人あたりの売上の金額自体が大きいからといって、そうとも言えないのが現実です。外商員は1~2割程のお値引きをして商品を売っています。そのお値引き分は外商側(=百貨店側)が負担することになるので、外商員1人あたり月に1000万円程売らないと利益が出ません。小売に関わられている方は月に1人あたり1000万円の売上をつくることがどのくらい大変かご想像に難くないと思いますが、正直、外商部にはかなり厳しい時代です。

それでも、やはり店頭に比べて高額商品を売りやすいのが外商部。外商員が出勤すると、宝飾や時計ブランド側の販売スタッフが商材を持って待っていて、一緒にお客さまの元に連れて行く、なんてこともあります。そのため、ブランド側も外商のお客さまだけにお見せする特別な商材を用意してくれることもありますね。

百貨店のあり方が変化していく中で、外商員こそが「百貨店の本来あるべき姿」を映している

―バブル期以降、縮小傾向にある外商部ですが、それでも百貨店が外商部を持ち続ける理由とは?

「よいお客さまがいらっしゃるから。」ではないでしょうか。利益率が低く儲からなくても、外商員がトップクラスの方と関係を構築することで、良い物を見させていただいたり、触れさせていただいたり、ご意見を頂いたりすることができます。普段はなかなか垣間見ることができない、そういった方たちのライフスタイルを知ることで得られる多くの情報を、売り場にフィードバックすることも外商員の大切な役割のひとつです。

かつては「共存共栄」「お取引先と一緒に成長していこう!」という考えを持っていた百貨店も、バブル崩壊、そして販売チャネルの多様化などで、百貨店ビジネスは利益率の高いファッション商材を中心に、効果・効率を求めて、店頭を重視するようになりました。これからは、店頭のスピード感、そして人の繋がりをベースにお付き合いを重視してモノを売る外商の思想、その両方を持ち合わせて柔軟に対応できる外商員が、求められているのかもしれません。

一方で、テナントビル化してしまった今の百貨店の人間は本当の「物を売り切る力」を持っていないのではと感じています。物を売り切るためにはさまざまな準備が必要です。物に対する知識はもちろんのこと、お客さまの立場に立ち、お客さまの身になって、物を選び、お買い上げ頂く。その後のケアまで考えておかなければなりません。まさにこれら物を売り切る力を持っている人こそが、外商部員です。

外商部は、これからますます小さくなり、もしかすると在り方自体も変わっていってしまうかもしれません。ですが、「ありがとうございます。」というお客さまからの感謝の言葉を糧に、人との繋がりで物を売り切る外商員の存在、それ自体が百貨店が本来あるべき姿を映し出していることは間違いないと信じています。

―貴重なお話、ありがとうございました!

※本記事は2015年1月15日に公開されました。

関連記事

販売員が本社職に転職して分かった店頭とオフィスの職場環境の違い
販売員として年収アップするためには?転職活動における希望年収の考え方。
2000名から選ばれたプロの販売員が語る「接客のコツ」と「販売員の価値向上に必要なこと」
販売員が経験した、外資系と国内系のリアルな違いとは?
デザイナー退任騒動の裏側で起きていることとは?ラグジュアリーブランドで働く販売員に聞いてみた。

アパレル業界特化型転職・求人サイト
Fashion HRはこちらから
 

Fashion HRはファッション・アパレル業界に特化した求人情報サイトです!

FHR_top

ショップスタッフや店長などの販売職から、PR、MD、VMD、営業、総務/経理、秘書、ロジスティックスなどのバックオフィス職まで、外資系ラグジュアリーブランドから国内有名ブランドまで求人情報を多数掲載中。早速、会員登録をして求人をチェック!

   
無料会員登録する

記事一覧