ライセンスブランドと雇用について考える

1998年にデサントとのライセンス契約を打ち切ったアディダス。2007年ライセンス企業を経営統合したポロラルフローレン、そして先日はバーバリー社と三陽商会の間で結ばれていたバーバリーブランドのライセンス契約が2015年6月で終了となるニュースが業界を駆け巡りました。もし、あなたが担当しているライセンスブランドの契約が切れて、ブランドがなくなってしまう……ということになってしまった場合、何かリスクはあるのでしょうか。今回はライセンスブランドと雇用についてのコラムをお届けします。

今回お話を聞かせてくれた転職コンサルタント
エーバルーンコンサルティング
代表取締役　池松 孝志さん

そもそも、ライセンスブランドとは?

では、今一度「ライセンスブランド」の仕組みについておさらいしてみましょう。仮に、あるブランドを持つ企業を【A社】、ライセンスビジネスを行う企業を【B社】としましょう。

この場合、ライセンスビジネスを行う側であるB社はブランド名を利用する権利(＝ライセンス)をA社から購入し、ライセンス元であるA社は、その対価としてB社へブランド名を使用する許可をします。つまり、A社が持つブランドの価値を利用する権利の対価として、B社がロイヤリティ(利用料)を支払うことにより、B社のライセンスビジネスが成立するのです。

売り出す商品のデザインなどについても、A社側の許可を得ることは必要となりますが、ブランドの権利を購入したB社は自社企画・生産の商品にA社のブランド名を付けて販売することができます。

日本でのライセンスビジネスは、今から30年程前「手の届きやすいブランド商品」としてブランドビジネス自体を日本に浸透させ、海外ブランドの黄金時代であった80~90年代のバブルの時期に最盛期を迎えたものですが、現在でも数多くの国内企業がライセンスブランドを運営しています。日本国内で企画を行うことで、インポート製品に比べ、MDの計画がしやすいこと、価格を抑えることができること、日本のマーケットや日本人の体型などに合わせたものづくりをしやすいこともライセンスブランドの魅力でしょう。

日本におけるライセンスブランドの一例(2014年7月現在)

ライセンス契約が白紙になってしまった！ライセンスブランドで働いている場合、雇用はどうなる?

結論からお伝えすると、特に問題視する必要はありません。従業員はブランドではなく、企業と雇用契約を結んでいます。「特定のブランドで働く」という条件での雇用はされていないでしょう。派遣社員や契約社員など期間が定まった雇用契約の場合は例外も起こりうる可能性が有りますが、「ライセンスブランド契約が白紙になった」＝「仕事がなくなってしまう（退職）」というような心配は基本的には必要ないでしょう。

そもそもライセンス契約を結べる企業は、ある程度の規模があり、資金力や経営状況も優れている、且つすでに複数の有力ブランドを有している、というような優良企業に限られています。もしライセンス契約の終了によって、ライセンスブランドがなくなってしまうことになっても、雇用関係に関しては他のブランドへの異動をするなど、会社側が戦略的に対応することと思われます。

逆に、外資系企業と呼ばれるような100%海外資本の日本法人の方が、雇用に関してはリスキーです。ある日突然「日本市場からブランドを撤退させる」という通達が本国から下ってしまえば、日本法人は清算となり、従業員との雇用契約は消滅してしまいます。これはとても大きなリスクです。

三陽商会が今話題となっていますが、日本のマーケットにおいてBURBERRYブランドを巨大ブランドへ成長させた企業力は健在で、特に百貨店でのビジネス展開では日本でトップクラスの力を持っています。同様のケースで、近年グローバル化を推進しアジアでも好調のスポーツアパレルのデサントがV字回復を見せたように、引き続き、三陽商会の動向には注目していきたいですね。