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地方の縫製工場が取り組む、次世代に向けた最高品質の服作り

3月27日から29日の3日間に開催された「ファッションワールド東京」では、さまざまな特別講演が行われました。今回は、岩手モリヤ代表の森奥信孝氏による特別講演「~安定した最高品質の服作りを目指して~ IoT導入など、スマート化を進める縫製工場の取組み」の様子をご紹介します。

「安定した最高品質の服作り」を目指して

岩手モリヤは、朝ドラ『あまちゃん』のロケ地としても知られる岩手県久慈市にある縫製工場で、ジャケットやウールコートなど重衣料の生産を中心に行っています。「安定した最高品質の服作りを目指して」をテーマに、これまで取り組んできたこと、そして今、取り組んでいることについて語ってくださった森奥氏曰く、「縫製業をとりまく環境は厳しく大変です」とのこと。とにかくみんなが頑張っている産業であることを強調していました。


この5年の国内繊維産業の概況を見てみると、事業所数は減少していますが、出荷額は増えているという現実があります。これは、国内生産において付加価値の高いモノづくりをしていることを表しています。国内市場における輸入浸透率の数字は97.6%。なんと、国内では2.4%しか作っていないというのが現状なのです。しかし、これはあくまで数量ベースの話で、金額ベースでいうと77.7%が海外、つまり22%は国内で生産されていることになります。国内の繊維工場の製品が、日本のアパレル産業でしっかりと活躍していると言える数字だと強調していました。現状を知るために、9年前にNHK「おはよう日本」で放送された、日本の縫製業が岐路に立たされている様子を追った番組の映像が紹介されました。

海外との価格競争から高品質のモノづくりへシフト

番組の映像では、日本の縫製業が危機にあるというお話がメインである中、消費者に新たな価値を、と模索する企業として岩手モリヤが紹介されました。30〜40代の働く女性に人気の東京・青山のブティック。10万円前後の価格帯のスーツを販売しています。「着心地が違う」と購入者たちが口を揃えるこのスーツを作っている会社こそ、岩手モリヤです。日本の繊維業界は、工賃の削減という理由で、中国人をはじめアジアの実習生を多く受け入れてきたという現実があります。もちろん今でも「できるだけ工賃を安く作りたい」という状況は変わらないと話す森奥氏。しかし、それでは知らぬ間に実習生に頼ってしまうことになってしまう。そこに危機を感じた森奥氏は考え方を改めたと言います。


それは「価格競争に巻き込まれない商品作り」でした。他社にはない工程をプラスすることで、女性の体になじむ商品を提供する。手間をかけることでフィットする洋服を作ることで顧客の心を掴みます。そして、労働力には地元の若者を積極的に採用することで、長く勤めてもらい、技術力を磨き高品質の商品を作れるように、経験をコツコツ積み重ねていくことを推奨。こうした取り組みによって、売り上げ減少に歯止めがかかり、国内ブランドからの評価につながったと言います。

付加価値が高いものは国内で生産しているという現実

岩手モリヤは国内ブランドに評価され、売り上げを伸ばしていますが、縫製業全体としての現状はあまり改善されず、事業所数も従業員数も半数以下になっています。この状況は今後も変わらないと予想している森奥氏ですが、「付加価値が高いものは国内で生産していることは事実。金額としては4分の1に当たる製品が国内での生産であることを考えると、国内の産業に精通する業者にとっては期待が持てると考えています」とのこと。


付加価値の高い商品にシフトすることは、生産性と相反することになります。いいものを作るためには、工程を追加することが必要になるからです。岩手モリヤも人の経験や勘に頼るモノづくりにこだわってきたと振り返ります。しかし、これでは競争力はなくなってしまうと感じ導入したのが「機械化」です。

社内のネットワークを強化!

岩手モリヤが取り入れた「機械化」は、品質を安定するための機械化です。機械化により削減できた労働力を、縫製に配分することで高い技術力を目指す取り組みをしてきました。社内でネットワークを結び、縫製前の工程の情報共有し、連携することで製品作りを進めたのです。


さらにCADをただ入れ替えるだけでなく、ソフトをカスタマイズして、パターンメイキングなどの基本的なことだけでなく、導入・進捗計画などをサーバー管理できるようにしたのです。人が行なっていたことをサーバーで管理することで仕事がスムーズに進むようになったとのこと。仕様書にはない工程を、会社の取り組みの中で加えることにしたそうです。そのほか、北岩手では岩手県が全面バックアップして、産学官連携によるイベントを行い、服作りの楽しさを味わってもらうことを推進しているそうです。暗い話の多い縫製業ですが、取引先を減らさない取り組みで、今後も独自のスタイルで、高品質のモノづくりの姿勢をつらぬいていきたいとアピールしていました。

Text:Shinobu Tanaka(RhythBiz)

 

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