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2019年、アパレル業界を席巻するビジネスモデル「D2C」。成功企業から見たその強みとは?

これまでのアパレル業界では、生産機能を持つ「メーカー」や「工場」、そこに生産を依頼する「ブランド」、各メーカーやブランドの作ったものを仲介する「卸業者」、そして消費者に販売する「小売店」と、それぞれの役割が分業化されていました。

しかし近年ではそれらの垣根が取り払われ、自社で企画・製造した商品を卸や小売店を通さず、ダイレクトに消費者に販売する「D2C(ディー トゥー シー)」の事業モデルに注目が集まっています。「D2C」の持つ可能性とはどのようなものなのか、実際に成功している「D2C」ブランドの実例とともに見ていきましょう。

「D2C」とは、メーカーが顧客に直接モノを売ることができる仕組み

これまで「B2B」や「C2C」という言葉やよく使われてきましたが、近年新しく使われるようになった用語が「D2C」です。まずはアパレルにおける、それぞれの用語の意味をおさらいしてみましょう。

「B2B」=Business to Business(ビジネス トゥー ビジネス)の略語で、企業と企業による取引のこと。縫製工場がブランド側から生産の発注を受け、製品を作って納品する、など消費者を間に挟まないビジネスのことを表します。

「C2C」=Consumer to Consumer(コンシューマー トゥー コンシューマー)の略語で、一般消費者同士による取引のこと。近年ですと、フリーマーケットアプリやネットオークションなどがよい例です。

「D2C」=Direct to Consumer(ダイレクト トゥー コンシューマー)の略語で、メーカーが直接一般消費者に製品を販売する取引のことです。

冒頭で述べたように、これまでのアパレル業界では製造や販売のプロセスにおいて役割が細かく分業化され、大きなサプライチェーンとして機能していました。この方法は、各部門の専門性が高まり、すべてのリスクを自社で負う必要がないというメリットがある一方、多数の工程を通過するたびにマージンが必要となり、結果として価格が高くなるというデメリットがありました。

また、ファストファッションブーム以降、アパレルの単価が下がる傾向にある現状では、値段設定を上げられないなか多数の中間業者を通すことで、メーカーや工場の工賃を圧迫し、負担を強いていた面も否めません。

しかし「D2C」のビジネスモデルでは、メーカーや工場が自社商品を開発し、主にECサイトを利用することで中間業者を通さず、直接消費者に商品を届けるため、消費者は高品質な商品を低価格で手に入れられ、メーカーや工場側はこれまでよりも高い利益を確保できる、という構造が実現するのです。

「SPA」と「D2C」の大きな違い

中間業者を取り払う、という点では90年代に活発化した「SPA」=製造小売、という流れがありました。これは『ユニクロ』や『GAP』などに代表されるビジネスモデルで、企画から製造、小売までを一貫して行うという、という点で「D2C」と共通点があります。しかし、大きく異なる点は、多くの自社店舗を持ちながら、トレンドに対応する商品をいち早く大量生産し、大量消費するのが前提である、というところです。

この方法は流行のアイテムをコストダウンすることには向いていますが、消費者のトレンドデータを基に効率のよい生産を突き詰めた結果、どれも似たり寄ったりのデザインとなりがちで商品の差別化が難しくなりました。その結果、価格競争に拍車をかけた側面もあったのです。

一方の「D2C」は、「品質の良い」商品を「従来より」安く提供する、ことに着眼したビジネスモデルです。これまでは小売店に集まっていた顧客からの要望や不満などもメーカー側に直接フィードバックされることで、さらに品質の向上を目指しやすくなる、というメリットもあります。これまで販売経験がなく、店舗を持たないメーカーや工場が、どのように販売するかという点が大きな課題となりますが、ITテクノロジーの進化によって消費者もスマホやPCからECサイトで買い物を行うようになり、店舗を持たなくても参入の垣根が低くなってきたことがこの動きを後押ししています。

それでは実際に「D2C」で成功した国内外の事例を見てみましょう。


Warby Parker (ワービーパーカー)

https://www.warbyparker.com

始めて「D2C」モデルを成功させた、と言われているのがアメリカで2010年に創業した眼鏡メーカー『Warby Parker』です。ペンシルバニア大学に通う4人の大学生により立ち上げられ、中間マージンを排除した仕組みを作るべく、企画から製造、販売までを自社で実施。創業当初はオンライン販売のみ、眼鏡の種類も10~20種類に厳選することで、高品質でデザインに優れた眼鏡をリーズナブルに展開。ミレニアム世代に支持されました。


Everlane(エバーレーン)

https://jp.everlane.com/ja-jp

同じく、アメリカ・サンフランシスコの企業である『Everlane』は、ECに特化したファッションブランドです。「D2C」モデルの多くは「中間コストを省く」ことを特徴にしていますが、“徹底された透明性”をモットーに掲げる『Everlane』の個性は、アパレル業界ではタブーとも言われる生産工場の情報と生産にかかるコストの内訳を明らかにしていることです(アメリカ本国サイトで実施)。そうすることで消費者は納得を持って商品を購入することができ、購入時の満足度も高まります。

また、セール時には①「製造費+物流費+ブランドの成長資金(利益多め)」、②「製造費+物流費+ブランドの成長資金(利益少なめ)」、③「製造費+物流費のみ(利益ゼロ)」という3種類の価格から消費者が支払う金額を選ぶ方法を展開し、あらかじめセールリスクを含めた価格設定を行う既存のアパレルに対する問題提起として、大きな話題となりました。


10YC(テンワイシー)

https://10yc.jp

2017年に誕生した日本の「D2C」ブランド、『10YC』。大手アパレル会社の生産管理部門で働いていたという代表の下田将太さんが、“10 Years Clothing=10年着続けたいと思える服”をテーマにクラウドファウンディングで資金を集めるところからスタートしました。取り扱いアイテムはTシャツやスウェット、シャツやパーカなどワードローブの定番になるものばかり。直接会って契約した全国の工場で生産を行うほか、製造原価率の内訳もウェブ上で公開しています。

2018年の8月末には、予想を超えるオーダー数に生産が追いつかず、サービスを一時休止するほどの(現在は再開)人気を見せました。購入したTシャツが汚れてしまった場合に別な色に染め替えるカラーリフォームサービスも提供しています。

 

「安さ」を追い求める時代から、品質のいい物を適正な価格で買う時代へ。メーカーと顧客との間を近くするうえ、ニッチな市場にも対応しやすい「D2C」型ビジネスモデルは、今後ますます増えていくと考えられています。この動きは「D2C」同士の価格競争につながる可能性もあれば、メーカーの個性や強みを伸ばしてもの作りに活力を与える可能性も秘めています。

「D2C」先進国アメリカの事例を見ても、いかに顧客からの信頼を勝ち得ていかに「ファン」を作るかが成功のカギ。これから日本において、どんな面白い「D2C」ブランドが登場してくるのか、これからも要注目のムーブメントです。
 

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