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テクノロジーの力で新たなプラットフォームを構築する3社が目指す、次世代のファッションビジネスとは?


ファッションの専門職大学院である「文化ファッション大学院大学」で1月28日~2月1日、「BFGU FW(文化ファッション大学院大学ファッションウィーク)」が開催されました。そのメインイベントとして1月29日、各界のスペシャリストを招き、「“It’s NEW”-変革するファッション・プラットフォーム-」をテーマに、次世代のファッションビジネスの新たな可能性を探るシンポジウムを実施しました。
激動のファッション業界が持つこれからの可能性、そして今だから大切にしたい観点など、次の時代のファッションビジネスを視野に語られた、その内容の一部をお届けします。

一人ひとりが自分らしい着こなしを楽しむ「システム」を提供する
Amazon Fashion

シンポジウムのテーマ「“It’s NEW”-変革するファッション・プラットフォーム-」における“プラットフォーム”とは今回の場合、商品や情報を集めた「場」を提供することで利用客を集めるビジネスモデルやサービスのことを指しています。流行の変化が著しいアパレル業界において、これまでになかった新たなプラットフォームを提供して存在感を発揮する3社からパネリストが選ばれました。
最初にプレゼンテーションを行ったのは、『アマゾンジャパン』のバイスプレジデントであり、Fashion部門の責任者であるジェームズ・ピータースさんです。
『Amazon』と言えば、世界18カ国・地域(2019年2月現在)でサービスを展開する、米国発の世界最大級・総合オンラインストア。2000年に日本法人である『アマゾンジャパン』が誕生して以来、事実上“日本最大級のECサイト”として存在感を発揮しています。
そして多岐に渡る取り扱いアイテムのなかでも現在、成長の著しい分野がファッション。2007年に日本のファッション市場に参入してから毎年右肩上がりで数字を伸ばし、2014年に『Amazon Fashion』というサービス名でリスタート。取り扱うブランドは数千以上におよび、2018年3月には、より商品の魅力を分かりやすく伝えることを目的に、『Amazon Fashion』史上世界最大の撮影スタジオを都内に設立しました。

「ECで洋服を購入する際、お客さまが悩むのは実際の商品との違い。そこで色やシルエットを正確に再現できるカラーコレクションブースの設営や、生地感やシルエットが動画で見られるようなシステムなどを導入しました。何百万あるアイテムの撮影は大変ですが、これを行うことでブランドとお客さまの距離が近くなることを確信しています」

2018年10月からは、『Amazonプライム』会員を対象にした新たなサービス、『プライム・ワードローブ』をスタート。『Amazon Fashion』内の対応商品のなかから、3~8点を自宅に取り寄せ、最長7日間自由に試着。試着後、気に入った商品を購入し、あとは送料無料で返品ができます。

「日本人は返品意識が低いが、世界で返品はあたりまえのサービス。これらの投資にかかる費用は決して少なくありませんが、私たちは非常に長い視野でビジネスを見て、必ずこの投資が生きてくると考えています。人々にとって、『Amazon』=ファッションというイメージではないでしょう。そもそもファッションという言葉は受け取る人によって意味合いが違う言葉です。ある人にとってはファストファッションであり、ある人にとってはハイファッションだったりする。『Amazon』ができることは、キュレーションしたり、定義したりすることではなく、少ない手間でストレスなくファッションを楽しんでいただくECストアを形にすることで、一人ひとり違うすべての人たちが服を通じて自分を表現できるよう助けることだと考えています」

とピータースさんは話しました。

レンタルを通じた「出会い」がショップに人を呼びこむ可能性も
エアークローゼット

次にプレゼンテーションを行ったのは『株式会社エアークローゼット』の代表取締役社長 兼 CEO、天沼聰さんです。
キュレーションを一切行わない『Amazon Fashion』とは対照的に『airCloset(エアークローゼット)』は、プロのスタイリストが一人ひとりに合わせて似合う洋服をコーディネートして届ける、日本最大級のファッションレンタルサービス。会員数は22万人を突破し(2019年1月時点)、2017年にはレンタルのみならず、プロのスタイリストが選んだアイテムを自宅に届けるパーソナルショッピングアプリ『pickss(ピックス)』もローンチしました。

「僕たちの目的はレンタルではありません。お客さまに洋服を通じて、固定概念の外にあるワクワクした気持ちを届けることです。お客さまの9割が働く女性で、4割強にお子さんがいらっしゃいます。忙しいけれどもおしゃれがしたい、でも新しいコーディネートに出会う機会がなくマンネリ化している、という人たちにファッションとの新しい出会い体験を届けたいのです」

ここでもやはりテクノロジーの活用は行われており、独自開発のオンラインAPIを導入してスタイリストに届くお客さまからのコーディネートに対するフィードバックを収集、AIのデータサイエンティストが傾向を解析し、より好みに近いコーディネートが届くよう精度をあげる工夫がなされています。

現在、サービスに参画するブランドは百貨店系からセレクトショップ系まで約300ブランド。働く女性が中心ユーザーであるため、仕事で着用できるコンサバ・ファッションを中心に展開しています。進行役である、文化ファッション大学院大学の首藤眞一教授から

「ファッションブランド側からすると、レンタルサービスは売上げに対する脅威と思われる面はないか」

という問いに対し、天沼さんはこう答えました。

「現代の生活は忙しいうえに情報が多く、消費者が新しいブランドと出会う機会がありません。レンタルを通じて新しいブランドと出会うことで、その店舗に足を運んだり、サイトを見てみたりするお客さまが多くいらっしゃいます。なかなか店舗に人を呼びこむのが難しい今の時代において、ファッションレンタルが、ブランドさま側にとってもお客さまとの新しい出会いをつくるきっかけになり、ひいては『もっとファッションを楽しみたい』という気持ちを高めるきっかけになるのです」

日本のものづくりを活性化し、ファッションの持続可能性に寄与する
シタテル

最後にプレゼンテーションを行ったのは『シタテル』の代表取締役、河野秀和さんです。
2015年に業務を開始した『シタテル』は、主に消費者向けのサービスを提供するこれまでの2社とは異なり、衣類生産に必要となるすべてのプロセスを最初から最後までサポートするプラットフォームを展開しています。ITを用いて、全国各地にいるデザイナー・パタンナー・縫製工場などをつなげることで、低価格・小ロット生産にも対応し、一般消費者だけでなくアパレルメーカーや小売店からも幅広く利用されています。

「これまで日本の物づくりと言えば、ウェブサイトすらない縫製工場がたくさんあるアナログな世界でした。私たちはそんな全国各地の工場を調べ、設備から過去の生産実績までそれらをデータベース化、繁忙期や閑散期の状況も把握することで、予算やつくりたい物に対して適切な情報を提供しつつ、つくり手側の稼働率を高めることができるようになりました。生産のやり取りはチャットで行われるため、場所も問わず、プロセスも透明化されるんです」

つくりたいものが、どこで・いくらで・どのくらいの納期でつくれるのか。そのような情報が得られるこのサービスが始まってから、日本のトップデザイナーや大手メーカーはもちろんのこと、企業の制服やノベルティの製造など幅広い利用者に使われています。地方自治体からの「職員の制服をおしゃれにしたい」という依頼や、熊本震災の際には、被災地で使用されたブルーシートをバッグにする、というクリエイターのアイデアを形にしたケースもあります。

「アパレルの商品単価が下がっている現状において、つくり手と生産者を直接つなげることで、生産者にしわ寄せが行かないような仕組みをつくりたい。さらにはファッションの抱える問題である過剰在庫の問題を改善するため、2018年4月から『スペック』という在庫リスクゼロの新しい流通システムをつくりました。大きな特徴は受注を受けてから生産に入れる仕組み。このことでつくり手にとっては売れ残りによる商品ロスを減りますし、工場にとっては賃金の低下を防ぐことになる。そして消費者にとってはいい物が安く購入できる。新しい価値を持ったプラットフォームを開発することで、未来におけるファッションの持続可能性に寄与することができれば、と考えています」

と河野さんは話しました。

3社がプレゼンテーションを終え、会場からの質問を受けた後、1時間40分におよぶ熱量のあるシンポジウムは終了しました。
今回、特徴的であったのは登場した3社すべてが、いわゆる“アパレル企業”ではないこと。そして最新のテクノロジーを導入していることです。不況と呼ばれる時代に、時代の変化を捉えて、いち早く新しい視点でファッションの面白さを広げていくには、新しい技術に対するアンテナを張り、柔軟な発想を取り入れていくことが求められている、ということを強く感じたシンポジウムでした。

Interview&Text:Aki Kiuchi

 

今回お伺いした主催団体

文化ファッション大学院大学

次代のファッション産業のリーダーを育成するために、95年にわたり日本のファッション教育を牽引してきた学校法人文化学園の実績とノウハウを結集し、日本初のファッション専門職大学院として、2006年に設立。理論と実務を架橋した教育を行い、独自のブランドやビジネスモデルを確立し、次代のファッションビジネスシーンにおいてグローバルに活躍する人材を育成する。

 

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