2018年はファッション業界にポジティブな変化をもたらした年でもありましたが、残念ながらさまざまな論争を呼ぶニュースや、偉大なファッションレジェンドたちが相次いでこの世を去った悲しい年でもありました。目まぐるしく駆け抜けた2018年、話題になったファッション界のビッグニュースを振り返りつつ、2019年の動向を予想してみました。みなさんはいくつ覚えていますか?
ベストファッションインルエンサー2018
晴れてオフィシャルに公爵夫人となったメーガン妃。ロイヤルウェディングからご懐妊報告まで、世間を騒がせた彼女はまさしく2018年のニュースメーカーでした。そして今、そんなスタイリッシュな彼女のファッションに世界中は大注目をしています。
ジョージ礼拝堂でお披露目したジバンシィのオートクチュールのガウンや、その後レセプション用に着替えたステラマッカートニーのホルターネックドレス。あの日以来デザイナーたちはこの強力なインフルエンサーのビックデーのおかげでサイトアクセスが急上昇し、インスタグラムに投稿された関連ポストにより、なんとジバンシィは250万ドル(日本円にして約2.7 億円)、ステラマッカートニーは200万ドル(日本円にして約2億円)にまで媒体価値が上昇しました。
また、昨年10月にロイヤルツアーで初めてオーストラリアを訪問した際に彼女が着ていたトレンチコートはブランド名が明らかになるとすぐに前月比の売り上げの44%アップを記録。今、彼女がデザイナーズブランドを着用すれば1週間以内に売り上げはおおよそ200%増加すると言われています。
メーガン妃はサステイナブルファッションにも着目し、積極的に環境問題に取り組んでいるデザイナーを率先して自身のスタイルに取り入れています。ここ数年、サステイナブルをコンセプトにしたブランドはますます増えつつあります。今後、こういったブランドはさらに大きく成長するチャンスではないでしょうか。またメーガン妃のPRによってどれだけ経済効果がもたらされるかにも注目をしていきたいところです。
ファッションを通じて生の声を届けるアクティビズム
フットボール選手のコリン・キャパニック氏はNFLで国家斉唱の際に片膝をつき、白人警官による有色人種への不等な人種差別に対して抗議の意を示したことで反響を呼びました。「自分の人種を抑圧するような国のためにプライドを持って国家を斉唱することはできない。自分にとってはこの問題はフットボール選手生命よりも重大だと思っている」とコメント。
そして、このコメントに感銘を受けたナイキは、JUST DO ITのの30周年キャンペーンでキャパニック氏を起用し、「Believe in something, even if it means sacrificing everything. (何かを信じろ。たとえそれがすべてを犠牲にするものだとしても)」というスローガンを掲げました。
このキャンペーン効果は絶大な反響を呼び、広告がリリースされてから株価はわずか1ヵ月以内に5%上昇、オンラインのセールスは祝日のレイバーデー後、なんと1週間で31%増加していたことがわかりました。このキャンペーンは、全世界の人々に向けてとても深い意味が込められた忘れられないメッセージスローガンとなりました。結果としてこの問いかけに対するサポートは大きな数字として表れ大成功だったと言えます。
ナイキがコリン氏を利用したという賛否両論な意見もありますが、このキャンペーンの真意を知ることで、彼がとった行動やこのニュースを知った人もいるのではないのでしょうか。
偉大なレジェンドたちの他界と今後
アメリカのファッションデザイナー、ケイト・スペードは昨年6月にマンハッタンの自宅のアパートで自殺をしていたことがわかりました。ケイトは2007年に夫アンディ・スペードとブランドを売却し、2016年に娘の名前を用いたシューズ、バッグブランド「フランシス ヴァレンタイン」をスタートさせたばかりでした。
またフランスのアイコニックデザイナー、ユベール・ド・ジバンシィも3月に91歳でこの世を去りました。彼はオードリー・ヘップバーンとも深い親交があり、彼女の代表作「ティファニーで朝食を」や「麗しのサブリナ」などの有名なシーンの衣装を手掛けたことで知られています。
さらにその1ヵ月後ハンドバックデザイナーのジュディス・リーバーも97歳でこの世を去りました。ラグジュアリーでまるで宝石のようなハンドバックは、ダイアナロスやバーバラ・ブッシュ、サラ・ジェシカ・パーカーなど多くの著名人に今でも愛され続けています。
2017年、ケイト・スペードと言えばコーチと統合しタペストリーとなったことや、ジバンシィは女性クリエイティブディレクターにクレア・ワイト・ケラーを起用したことはまだ記憶に新しいニュースです。今後も偉大なデザイナーたちの意志を継承し、後継者たちがどのようにブランドに新しい風を吹き込んでくれるのか目が離せません。
ヴィクトリアズ・シークレットが直面するこれから
ヴィクトリアズ・シークレットのファッションショーが批判を浴び続けているのは今に始まったことではありません。2018年、「ダイバーシティ(多様性)」を掲げるキャンペーンがあちらこちらで叫ばれていたのにもかかわらず、毎回壮大なモデルキャスティングを行う同社は、プラスサイズモデルを起用せず、ボディ・ダイバーシティーが不足していると大きく指摘を受けました。
しかし、ヴィクトリアズ・シークレットはVOUGUEのインタビューで、カーヴィーモデルやトランスモデルはブランドのコンセプトにはまらないと強気な返答。それに対しヘルスコンシャスでありのままのボディをサポートするランジェリーブランド、サードラブは、ニューヨークタイムスの全面にこの問題を厳しく批判するオープンレターを掲載し、メディアを通じて怒りの気持ちを表しました。
今後、サードラブのようなヴィクトリアズ・シークレットとはまったく異なる路線のブランドの勢いがさらに加速するのではないでしょうか。また、ヴィクトリアズ・シークレットが汚名返上を兼ねてどのように時代のニーズと独自のコンセプトをうまく織り交ぜ、新しいコンセプトを提案できるのかが見どころです。
2019年のファッションはどうなる?
ニューヨークのファッションは驚くほどの勢いとスピードで絶えず変化をしています。2019年はファッション業界にとってよりいっそう挑戦的な年になるのではないでしょうか。
2018年のニュースからも読み取れるように消費者は「何を、どこで、どのように物を買うのか」、お金の使い方にも慎重になってきていることが伺えます。目に見えない付加価値をどうやって理解してもらうことができるかがキーポイントになってくるでしょう。
今年はファッションだけにとどまらず、一つのランゲージとしてまたプラットフォームとして新しいサービスや事業が出てくることに期待しています。
Text : Haruka Sagoya
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