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「なんでも合います」はお客さまを迷わすNGワード!スタイリストが教える、商品とお客さまの“幸せな出逢い”を導く接客|スタイリスト山下万里香

セール真っ盛りですね!私も研修や執筆に向けて現場ではどんなことに困っているのかを知るためにショップを回るのです。…と言いつつ、すっかり自分の買い物に夢中になってしまいました (笑)。

ですが、仕事を忘れ、お客さまの目線になったからこその発見もありました。

「買おうと思って入ったのに買わなかったお店」と「買うつもりがなく入ったのに買ったお店」この2つには大きな差がありました。

セールは販売スタッフさんにとって体力も気力も使う大変な時期です。せっかくのがんばりが少しでもたくさん報われるように、先日お伝えしたまりかの接客メソッドのSTEP③「コンプレックスの解消」のケーススタディとしてお伝えしたいと思います

●トークはしりとり!? 「ん」で終わるとゲームオーバー

セール中は、色欠けやサイズ欠けなど現場に「ない」ものがたくさん!「ありません」「できません」的な状況がたくさん発生しますよね。でも、それをそのまま伝えると、お客さまとの会話がそこで終わってしまいます。

だからこそトークはしりとりと思って挑んでみてください。たとえば…

「この色のMサイズは在庫がありません。ですが、別の色でしたらこのサイズがありますし、デザインが違えば似た色のご用意がありますので、一度試してみられませんか?」

といった感じです。「ん」で終わりそうなところから新たな提案に切り替えましたね。

一見あたりまえに感じることですが、「買おうと思って入ったのに買わなかったお店」ではどこも0%、反対に「買うつもりがなく入ったのに買ったお店」ではどこも100%、しりとりに勝つトークを徹底されていました。

これは単にトークが上手ということではなく、目線が逆だということです。サイズがないから買えない、というのは服にお客さまを当てはめる発想。お客さまのサイズのものを紹介する、というのはお客さまに服を合わせる発想です。

●「商品に合うお客さまを見つける」のではなく「お客さまに合う商品を見つける」

アパレルに限らず、家具も家電も各業界でこの「商品に合うお客さまを見つける」という古い販売スタイルから「お客さまに合う商品を見つける」という新しい販売スタイルへ移行できるかが生き残りの大きなカギとなっています。

「商品に合うお客さまを見つける」といったケースに、次のようなやりとりが挙げられます。試着する前に商品のことをよく説明せずに…

「お客さま試着されてみて、いかがですか?」
「ちょっと私にはスカートの丈が長すぎるかな…」
「インポート商品なので、このスカートは長いんです」
「…(じゃあなんで試着をすすめたの?)」

と、文字にすると変なやりとりですが、実際にはよくあるケースで、買わなかったお店では何度も体験しました。

一方で、思わず買ってしまったお店での対応はこうでした。

「たしかにちょっと長いですね。でもウエストからヒップにかけてのサイズは合っているので、丈だけお直しされるのはいかがですか?ご面倒ではありますが、そうしておくとオールシーズン使えますし、スニーカーでもブーツでも合わせられるようになりますよ」

商品の長さや素材は見ればわかるので、試着後はこのように「商品 × お客さま」のコラボ状態で何が起きているか、それをどう解決するかを伝えることがポイントです。

●「なんでも合います」はお客さまを迷わすNGワード

セールで買うかどうかものすごく迷った服がありました。ブルーやパープルやオレンジのマルチカラーのボーダーで、ゴールドラメのラインも入っているタートルニット。おしゃれなデザインではあるものの、下手をしたらいわゆる「おばちゃん服」になってしまうかもしれない…。妙齢な私にとっては切実な問題で、まじまじとそのニットを見ていたとき、スタッフさんに「お客さまでしたらモードなパンツと合わせるといいですね」と声がけされ、あっさりと購入することにしました。

「お客さまの雰囲気だったらデニムとかで無難に合わせるよりシャイニーなスカートやアシンメトリーなワイドパンツでモードに着てもらうのがおすすめですよ」。さらに私の服装を見て「お客さまだったらお持ちじゃないですか?個性的なボトム」と聞かれて、ついさっき買ったパンツが思い浮かびました。

スタイリストなのに、恥ずかしながら全身のコーディネートのことよりもニット単体のことばかりに目が行っていた私を、一歩引いた目線に引き戻してくれた一言でした。

もし「柄にいろんな色が入っているので、ボトムは何でも合いますよ」と言われていたら、まだ「このニットでおばちゃんに見えないだろうか」という心配から逃れられなかったと思います。

「なんでも合います」というフレーズは、魅力的なような気がしますが、実際はお客さまを迷わせる言葉でもあるのです。具体的に絞れば絞るほどお客さまは想像しやすくなります。

たとえば、「濃い色で細めなデニムと合わせるとお客さまの足の長さが生かされると思います」とか、「お客さまなら黒の膝丈スカートと合わせて、エレガントに着ていただくのがおすすめです。近いものをお持ちですか?」と会話を進めることで、お客さまは今試着している服をいつどのように着るかをイメージすることができます。

もし合うボトムが手持ちになければ、お店にあるボトムを合わせて試着することでセット販売につながるかもしれません。

セールはお客さまにとって楽しい時期ですが、ついつい使わないものを買ってしまうんじゃないかいうリスクを感じる時期でもあるのです。

お客さまを主役としたあなたの接客で、このセール時期にお客さまをめいっぱいよろこばせてくださいね!

今回のコラム執筆者

スタイリスト/パーソナルスタイリスト|山下万里香さん

1979年生まれ。ホテルや会場の専属ブライダルスタイリストを経て2014年スタイリングオフィス『デイズ・ヌーヴォー』を立ち上げる。パーソナルカラー・骨格・イメージなど「似合う」を取り入れつつ、カウンセリングに愛情を注ぐ独自のパーソナルスタイリングを実施。10,000人以上の女性から支持され、トータルコーデレッスンやショッピング同行が人気を集める。2017年『スタイリストが教えるお客さまがもっと素敵になる接客術』を出版。『ファッション販売(商業界)』にも寄稿。蔦屋書店でのトークショー、企業研修や講演を通じ「出逢わせ」で売る側と買う側の両方のスキルアップにも力を注ぐ。大手通販会社での商品開発や百貨店でのイベントプロデュースも手掛ける。

 

山下万里香さんの著書


『スタイリストが教える お客さまをもっと素敵にする! 接客術』
お悩み別スタイリング処方箋。お客さまの「こうなりたい」を叶えるコーディネート術。信頼関係をつくる裏表のないコミュニケーション。お客さまの隠れた本音の見つけ方。―すぐに使えるテクニック満載!

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