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NY在住、90歳の伝説のパーソナルショッパーから学ぶ“心をわしづかみにする”接客

ニューヨークで生活をしていると、日本の接客スタイルと大きくかけ離れていると感じることが多々あります。例えば、お店に入ってもいわゆる「いらっしゃいませ」や 「何か気になることがありましたらお気軽にお申し付けください」といった入店グリーティングが存在しないところや、気になった商品を手に取ったり商品を鏡で合わせていても試着室への案内がなかったり、自分から質問をしないと商品に対する説明が得られないことがあります。また、会計後、購入した商品を丁寧にたたんでショッピングバッグに入れてくれると思いきや、くるくるっと丸めて手提げバックにレシートと共に入れるだけだったり、軽いショックを覚えることもあります。これらはほんの一例ですが、どちらの国のほうが良いとか悪いとかではなく、単純に文化の違いから生じるものだと思っています。

一方で、店員の人に「その服いいね!どこで買ったの?」などとフランクに声をかけられることがよくあります。単純に褒めてくれるだけなら、接客戦略としてのお世辞なのかなと思うこともありますが、買ったお店をたずねられた時やそのブランドのインスタを教えて欲しいなどとディテールを聞かれた時には、お客さまと販売員の立場を抜きとして、素直に興味を持ってくれているんだなと感じとれ、単純に嬉しい気持ちになります。

また「この商品は今とっても売れているんです。店頭ではこれが最後の1着になります」といったありきたりなフレーズは、ニューヨークではほとんど耳にしません。その代わり、「これは私のお気に入りなんです」という具合に、こちらから聞かずとも自分の好みを丁寧に理由付きで聞かせてくれることが多々あります。購入する側の視点で言い換えると、ニューヨーカーたちは「あなたはどう思うのか」と販売員の意見を聞くことが一般的で、大多数の消費者がその商品を好むか好まないかはあまり参考にならないようです。その販売員の意見を尊重し、その商品に対する見解が自分にあてはまるか当てはまらないかで購買を検討する傾向があります。

伝説のパーソナルショッパーの接客ポリシー

ニューヨークの5thアベニューにある老舗高級デパートメントストア、バーグドルフ・グッドマンに勤めている現役のパーソナルショッパー、ベティ・ホールブライシュさんを知っていますか?第二次世界大戦後にシカゴからニューヨークへ引っ越し、40歳を過ぎてからバーグドルフ・グッドマンで販売員としてのキャリアをスタートさせました。その勤続歴はなんと人生の半分近くとも言える40年以上に渡ります。現在は店内の3階にベティさん専用のオフィスを構えていて、著名なセレブから一般人まで世界中から彼女を訪ねに来る人が後を絶ちません。彼女の持ち前とも言える毒舌で、似合わないものははっきりと似合わないと言い放つ型破りのセールス術が顧客のハートをがっちりとつかんでいるようです。バーグドルフ・グッドマンのストアマネージャーは、彼女についてこんなことを語っていました。

「トップセールスマンとミドルセールスマンの違いは経験値の差だけだ。しかし、ベティの場合はその経験値という枠を飛び越えて、絶大なる信頼が顧客との間に確立されている」

アメリカの販売員の給料システムはファストファッションのようなあまり接客をしないお店を除いては、たいてい基本給+歩合で決まることが多いのですが、ベティさんはあえて歩合で仕事は引き受けたくないと断ったことでも有名です。その理由も含めて、彼女は数々のインタビューで自分の接客に対する姿勢を次のように答えていました。

―販売員としての自分の一番の強みは何ですか?

私は本当に聞き上手なの。単純に人に興味があるのよ。聞き上手になると、相手は心を自分にすっと開いてくれて、なんでも正直に話してくれるの。

―あなたにとってパーショナルショッピングエクスペリエンスとはどんなものであるべきだと思いますか?

一種のセラピーみたいなものかしら。みんな私とお買い物をしたいという名目でありながらも、本当はおしゃべりしに来たいみたいね。

―もし、とっても素敵な服を着ているのに、うまく着こなせていない女性に会ったらどんなアドバイスをしますか?

その人にとって正しいサイズを伝えてあげるわ。メンズサイズをうまく着こなす人もいるでしょ。単純に自分の体にフィットするサイズだけが必ずしも自分のサイズじゃないのよ。

―好きなデザイナーは?

好きなデザイナーはいないの。ブランド名や値段で洋服をお客様に選ばないのが私のルール。本当に心から似合うと思ったものだけをチョイスするわ。

―販売という仕事に携わり40年以上経って、感じること何ですか?

45歳の時の自分より今の90歳の自分に満足しているわ。

―服を購入する時のポイントはなんですか?

今日テレビやマガジンで目にするものは買わないことね。数年経っても自分に自信を持って着られるもの。それかリサイクルできるものを選ぶといいわね。

―今までにショッピング中毒のクライアントはいましたか?

もちろん、いたわ。でもね、そういう時は「もういいでしょ。それ以上買わなくて。もうおしまいにしましょ」って言ったわ。

日本で接客はお客様にホスピタリティを提供することを含めて、気持ちよくお買い物をしてもらうことがミッションと考えられていますが、アメリカではまた少し異なる接客スタイルが存在しています。もちろん、売上げを立てていかなくてはいけない職業に変わりはないのですが、ベティさんの服とお客様に対するユニークな姿勢はとてもまっすぐで、こんな人に接客をされてみたいとさえ思います。海外で販売員としてチャレンジしてみたいと思っている人は、“常識”という言葉にとらわれず、文化の違いをヒントに積極的に自分の個性を大事に,積極的になんでもトライしてみることが成功への秘訣となるかもしれません。

Text : Haruka Sagoya

 

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