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若手から大御所俳優、幅広い業界人を陰で支えるコスチュームデザイナー匠の技。その源とは?

東京・新宿の東京モード学園にて10月31日、コスチュームデザイナー・高橋正史さんを講師に招き、特別講義が行われました。俳優からアーティストまで、映画やライブの舞台に使われる様々な衣装を手がける高橋さんは同学園の卒業生。後輩たちに向けて届けた言葉でありながら、コスチュームデザイナーを目指すすべての人たちに参考となるそのメッセージの内容とは?

 

デザインから縫製まで、自分の手でつくることを目指して

高橋さんが檀上に登場すると、学生たちはメモを片手にその姿を見つめます。映画やドラマで俳優が身につける衣装や、アーティストのステージ衣装などをつくるコスチュームデザイナーであり、それらの製作を手がける会社の経営者として若手の育成も行っている高橋さん。まずは現在の仕事に就いた経緯からお話は始まりました。

東京モード学園の学生だった当時の目標はデザイナー。しかし就職活動の時期を迎えたとき、自分にはもっと勉強すべきことがあるのでは、と思うようになったのだそうです。

 

「イヴ・サンローランのようなカリスマデザイナーに憧れていたので、自分にはまだ実力が足りないと感じていました。そんなとき先生にテキスタイルデザインの仕事を紹介され、まずは働きながら生地のことを学んでみようと思い立ったんです」

 

デザインは学んでいても、生地をつくるノウハウは知りません。化学繊維の混率の計算や、生地の組織図の見方、さらにはどんなアパレルがどのような生地を使っているのか、など会社に入ってから学んだことはたくさんありました。生地に対する見聞を深める日々を数年過ごした後、そろそろ洋服をつくる仕事に戻りたい、と就職先候補を探し始めましたが、どこもしっくりと来なかったのだとか。

 

「アパレルの現場は、デザイナーはデザインだけ、パタンナーはパターンだけを担当する分業制が一般的です。僕はデザインを形にするところまでを自分の手でやりたかったのですが、探してもそんな会社はどこにもなかったんです」

 

卒業して数年が経過していましたが、東京モード学園時代の同級生とはずっと交流が続いており、毎月食事会を開催して近況報告をしあっていました。その会で、友人たちに悩みを打ち明けると「そういうことがしたいなら、舞台衣装をつくってみたら?」というアドバイスが。たしかに、舞台衣装ならデザインから製作までをひとりで手がけることができ、量産を念頭におく必要もありません。もらった言葉をきっかけに、高橋さんは衣装デザイナーに挑戦してみよう、と心に決めます。

地道な努力と、周囲の助けに支えられ、初の仕事を獲得

「衣装デザイナーを目指そう」と決めた高橋さんは、当時の社長に退社の決意と新たな目標を伝えます。すると「会社がサポートするから、退社せずに事業部として挑戦してみては」と嬉しい提案が。しかし喜んだのも束の間、そこからが大変でした。

 

「僕の縫製技術は、専門学校を卒業した当時のレベルのままです。これではマズいと、海外のコレクションが掲載された雑誌を買ってきて、そこに載っている一番難しそうな洋服を完全にコピーする、という自主トレーニングを地道に続けました。セールになっている洋服を買ってきて、解体して内部の構造を学んだこともありましたね。会社からお給料をもらっている立場ですから、練習ばかりもしていられません。なんとか仕事を取ってこないと、と芸能プロダクションやCM制作会社に何百通もDMを送りましたが、反応はゼロ。焦りだけが募っていく毎日でした」

 

そのとき、突破口を開いてくれたのは、またしても東京モード学園時代の同級生でした。

 

「アパレルの広報部や販売促進部には、衣装を担当するスタイリストが出入りするはずです。いつもの食事会のとき、それらの仕事をしている同級生に仕事が見つからないことを相談し、『衣装をつくれる友人がいることを、機会があったらスタイリストに紹介してほしい』とお願いしました。すると後日、初めての衣装の問合せをもらえたんです」

 

初注文は、銀行の職員がイベントのパレードで着用する衣装でした。トップス・ボトムス・帽子の3点セット、20人分を1週間で仕上げるという決して楽ではない内容でしたが、無事に納品を終えて評判も上々。じわじわと口コミを呼び、注文の数も少しずつ増えていきました。オーダーの数が増えていくにともない、ひとりですべてをつくり上げるのは難しいほどの規模に。そこで高橋さんは会社から独立、縫製やパターンを担当してくれるスタッフも加わった自身の会社を持つようになったのです。

何でも話せる仲間と、あきらめない気持ちを大切に

その後、高橋さんは数々の著名な俳優やアーティストのお仕事を手がけるようになります。

 

「昭和の大スターである高倉健さんの衣装製作を頼まれたことがありました。後日、その服を気に入ったご本人に呼ばれ『お前なかなかやるな。これから、俺の服を頼むな』と言われたときは、足が震えるほどの感動を覚えましたね。また、かつてサザンオールスターズが横浜でライブをやったときのステージ衣装も担当させていただきました。激しい動きのあるダンサーの衣装は修理もつきものです。泊まり込みでの作業は大変でしたが、当時の日本一の動員数を記録した10万人の観衆がワッと声をあげる様子をステージ側から眺めていると苦労も吹き飛びました」

映画『王妃の館』では主演の水谷豊さんをはじめとする作中の衣装を担当。約1ヵ月間パリに滞在しながら撮影に深く関わる経験も。現在も、映画やドラマなど、様々な現場で高橋さんの仕事を見ることができます。最後に、学生たちにこんなメッセージがありました。

 

「学園にいる今、勉強はもちろん大切ですが、同時に何でも話せる仲間を大切にしてください。僕は友人にたくさん助けてもらったし、その後に自分が助けられることは精一杯助けてきました。人間はひとりでできることに限りがある。でもみんなで助け合えれば、大きな力が生まれます。今日こうして振り返ると、みなさんにお伝えしなかった大変なこともたくさんありました。でも不思議なもので、どんなにそのとき辛くても過ぎてしまえば忘れてしまいます。想いどおりにいかなくて悔しいとき、悩むときもあると思いますが、それでも途中で止めずに、最後まで自分のこだわりを手放さずにやりきってください。最後までやりきれば悔いが残ることはないし、そのままあきらめずにやり続ければ、絶対にチャンスがやってきます」

 

Text:Aki Kiuchi

 

今回お伺いしたセミナー主催者

東京モード学園

大阪・名古屋・パリに姉妹校を持つファッション・デザイン・美容の専門学校。実践的な技術の修得だけでなく、創造力、応用力、業界適応力も身につけた、業界の第一線で活躍できるプロフェッショナルな人材を育成する。資料請求はホームページから。

 

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