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EC化が加速するファッションビジネス企業3社から学ぶ、リアルとデジタルを融合した新時代の顧客体験


10月22日〜24日の3日間、国内最大のファッションイベント「ファッションワールド東京 2018」が、東京ビックサイトにて開催されました。今回は、その中の特別対談セミナー「リアルとECの融合がもたらす未来〜ファッション小売10年後の将来像〜」の内容をお伝えします。

登壇したのは、ビームスでEC統括部部長を務める矢嶋正明さん、アーバンリサーチで執行役員兼Web事業部部長を務める坂本満広さん、コメ兵で執行役員兼マーケティング統括部長を務める藤原義昭さん、そしてモデレーターにオムニチャネルコンサルタントの逸見光次郎さんの4名。錚々たるメンバーで語られる、リアルとECの融合がもたらす未来とは? その内容をひも解きます。

 

ネットの登場で消費者の生活と小売業界は大きく変化している

100年ほど前に百貨店が誕生してから、ファッション小売業界を取り巻く環境は大きく変化してきました。大型化、小型化、専門化、ショッピングモールのような複合/集積化など、店舗形態はさまざまな変遷を遂げ、現在の小売・流通業は成長が鈍化しています。その一方で、インターネットやスマートフォンの普及によって人々の生活が変化し、カタログやテレビで行われていた通信販売は徐々にネットへとシフト。メルカリやヤフオクのような「ネット小売」と言われるサービスも登場し、C to C 、B to Cのサービスも日々進化しています。

 

「買い物の場所や時間がより顧客に近いところへ移行したいま、誰もが自分の好きなタイミングで、買いたいものを購入することができます。時代と顧客を取り巻く環境が変化したからこそ、ECのような新しい取り組みはもはや必然です」

 

と逸見さん。とはいえ、経済産業省のデータを見てみると、店舗ビジネスでの売り上げが市場全体の95%を占めており、ECはまだ5%にしか過ぎません。

ネットとスマホの登場や消費者の生活の変化にともなって、作れば売れていた時代から、顧客が選んで買う時代に。商品の情報、選択肢が増え、購入がますます複雑化しています。そんな中で、店舗とネットの役割はどのように変化していくのでしょうか。実際にECを活用し成功している3社の例から学んでいきましょう。


メディアコマースサイトへの進化
ビームス
https://www.beams.co.jp/

ビームスは2009年に他社との協力体制という形で初のECサイトを立ち上げ、2012年頃には、リアル店舗とEC店舗でのサービスの共通化や、顧客の購入体験などを融合させていく方向に舵を取り始めました。しかし、「単にECの売り上げを伸ばすだけでは、なかなか難しい」と感じ、2016年、自社のECサイトを直営化。商品画像を制作するための専用スタジオとEC専用の自社物流を用意し、EC事業へ本格的に注力しはじめました。

現在ビームスのサイトには、店舗スタッフが気軽に投稿できるコンテンツとしてブログ、スタイリング、フォトログの3つがあります。

 

「運営を始めて2年で投稿数は約14万ほどあります。非常に大きい情報を顧客に提供できていますし、コンバージョンの高かった販売員にわざわざ会いに来てくれるお客様もいます」

 

と矢嶋さん。ITやデジタルが進化すればするほど、逆に超アナログに価値を見出すこともあるのだと考えさせられます。


さらに特徴的なのが、全社の在庫を自由化したことだと言います。

 

「オムニチャネルを実現したい思いで、自社の倉庫の中にEC専用物流を作りました。お客様に、いつでもどこでも自由に買い物をしていただくためには、在庫が適切に管理できないといけません。もしECと店舗のどちらかで在庫を切らしてしまっても、お互いに在庫を補完することができます」

 

ECサイトのメディアコマースサイト化を目指すビームスは、今年に入ってからは、海外ECを立ち上げたり、動画コンテンツ「VIDEO」を開始するなど、デジタル化を加速させています。


Webでもスタッフ一人ひとりの個性を大切に
アーバンリサーチ
http://www.urban-research.com/

アーバンリサーチが通信販売を始めたのが2005年。当時は専門スキルをもった人材を集めるのが大変だったそうですが、現在、Web事業部にはEC専門のプロが130人ほどいて、最近はリアル店舗から異動してくる人も増えているそうです。

 

「在庫管理やコーディネート販売など、リアル店舗の人間が入ることでサービスはさらに良くなります。ITリテラシーがほとんどない人間も、勉強しながら経験を積んでいます」

 

と坂本さん。会社の成長戦略のひとつとして捉え、人材の異動などにも柔軟に対応していることが伺えます。


そして、アーバンリサーチで特徴的なのがサイトの活用法です。店舗スタッフ一人ひとりの紹介ページがあり、ユーザーはチャットボットを活用してスタイリングの相談をすることもできます。

 

「お客様の中には、ここのスタッフが好きだからという理由でブランドを選ぶ方も多いんです。たとえスタッフが移動しても、EC上でお気に入りのスタッフとコミュニケーションをとったり、活動を知ることができます」

 

スタッフ一人ひとりの個性を大事にしているのが、アーバンリサーチの魅力のひとつなのかもしれません。

スタッフの売り上げに準じたランキングもあり、それは人事評価にも配慮されるとのこと。最近は、「アーバンリサーチバイヤーズセレクト」という厳選された商品を紹介するメディアや、ギフト専門のショップ「musve」などの取り組みにも力を入れています。


3つの強みをオムニチャネルで繋ぐ
コメ兵
http://www.komehyo.co.jp/

元は米屋として創業したコメ兵は、時代に合わせて柔軟に業務内容を変化させ、現在はラグジュアリー商品のリユースを専門に行なっています。そのほか最近では、ブランド品だけを扱うのではなく、一点突破型のMA事業として、スニーカー専門のショップを始めたり、フリマアプリへの参入を果たしたりと事業は多岐に渡っています。

フリマアプリでは、コメ兵ならではの強みを生かしていると語る藤原さん。

 

「フリマアプリを使わない人の話を聞くと、偽物が多いという理由を挙げます。私たちは創業から今まで、鑑定をずっとやり続けているので社内にナレッジがあります。そのナレッジを横展開し、KANTE(カンテ)という鑑定事業を始めました」


コメ兵のEC化率は約25%。しかし、ECとリアルを分けて考えるのはナンセンスだと藤原さんは言います。コメ兵では、1,500万円のロレックスやヴィトンなど高価な商品の取り扱いがあり、そういった品を求める方の約60%のお客様が、先にECでチェックしたうえで、店頭を訪れ購入しているのだそう。

 

「お客さまの動きは、リアルもデジタルもあまり関係ない。ECでは売れないことが分かっていても、しっかりと商品を載せることが、店舗への誘導、商品の信頼のためにも非常に重要だと思っています」

 

70年の買取で培った「人」という強み、徹底したコピー品排除と品質の管理で生まれる「商品」の強み、そしてリユースショップとは思えないほど綺麗な「店」という強み。コメ兵では、これら3つの強みをオムニチャネルで繋ぎ、顧客へ提供しているのです。老舗でありながら現状にあぐらをかかず、自社の強みを生かしつつ時代の変化に対応したコメ兵。それが成功し続ける要因なのかもしれません。

これからの店舗とスタッフ教育はどう変わるべきか

最後に、話題は未来の店舗の話に及びました。少子高齢化が進む今、店舗の維持は年々難しくなってきていますが、だからといってデジタルに一点集中するのではなく、店舗とデジタルの役割をそれぞれしっかり考えていかなければなりません。

 

「現在は、お客様の可処分所得ではなく、可処分時間の奪い合いになってきています。お客様の時間を考えたときに、オンラインとオフラインをしっかりマージンするのが重要。それを店舗のスタッフにも理解してもらわないといけないですし、経営者もそれを踏まえて考えていくことが大切です」

そう藤原さんは言います。


また、2020年に5G(第5世代移動通信システム)が始まると、リアルタイムでデジタル接客ができるようになり、それを使いこなすためのスタッフ教育や役割分担も重要だと言います。

 

「いくらECが広まっても、もともとデジタルリテラシーの低いスタッフが一から勉強することは難しいです。スタッフたちが楽しみながらデジタルを使いこなしていくことが非常に大切だと思っています。上から押しつけるのではなく、世の中の流れにスタッフを巻き込んで、僕らも一緒にジョインしていきたいと思っています」

 

と矢嶋さん。

今まで培った専門性やコンテンツを、デジタルを使ってどのように広域に発信していくか。そしてその質を落とさずに、いかに進化させていくか。その中に、店舗という接点をどのように活用するか。これからのリアルとECを考えるきっかけとなる非常に貴重な機会でした。

Interview&Text:Tomoka nakano(RhythBiz)

 

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