もしあなたがきちんと接客しているのに、なんだか思っているのと違う展開になってしまって自信をなくしたり疲れちゃったりしていたら、『売る』のをいったんお休みして『出逢わせ』を目指してみませんか？

私はパーソナルスタイリストとしてお客さまに服の選び方をレッスンしたりショッピングに同行したりしていますが、ブライダルで仕事をしていた頃、売れないスタイリストだった時期が長くありました。
ドレスやフラワーショップの販売促進の役割があるため、売上があがらないと仕事に呼ばれなくなるし、お客さまの同行者でもあるので花嫁さまに喜んでもらえないと指名が入りません。

仕事をがんばろうと思って一生懸命ドレスをおすすめするとお客さまから「売りつけようとする」と誤解をされてしまって悲しい気持ちになったり、お客さまを傷つけることを怖がり過ぎて、あまりお似合いじゃないのに「キレイです」としか言葉が見つからず、猛烈なジレンマを感じたりしていました。

売る側と買う側の両方に喜んでもらうにはどうしたらいいのか…。試行錯誤していく中で「売ろう」とするよりもお客さまが「買うのを手伝おう」とすると売れるということに気づき、暗黒期を脱出するきっかけになりました。

そもそも『出逢わせ』ってなに？

販売のお仕事を一生懸命がんばっていると、ついつい商品のことを説明したくなりますが、売れる人は、会話が「お客さまの場合は」から始まっています。
「肩幅を気にされているようでしたら、このジャケットがおすすめです」や「上品なイメージがお好きでしたら、こういった揺れ感のある素材はいかがでしょう」といった感じです。

お客さまは自分がキレイになるための洋服を買いに来られているので、その思考に沿って「あなたが買うとしたらこれがいい」という伝え方だと、頭にすっと入りやすいんですね。「お客さま」が「買う」ということをサポートする感じになります。

反対に会話を「こちらの商品は」から始めて、「こちらの商品は本日入荷しました」や「こちらは2wayの使い方ができるので便利です」といった感じになると、主語が商品になっているのでお客さまの心になかなか届きません。「お店の人」が「売る」ということにフォーカスされています。

『出逢わせ』とは、お客さまを引き立てる商品を探すことであり、商品を買ってくれる人を探すことではないのですね。

お客さまをあたたかく迎えながら、一緒にお客さまの気持ちに寄り添って、楽しいショッピングを叶えていくのが、出逢わせ上手な人です。

ときには目的地まで迷わないようにお客さまをお連れしてその土地や名所の楽しさをお伝えするツアーガイドのように、ときには患者さまの症状に合わせて治療していくドクターのように、またあるときにはクライアントさまの話にしっかり耳を傾けるカウンセラーさんのように…。コンプレックスという痛みを取り除いたり、こころの声を叶えるためにしっかり話を聞いたりしながら、ファッションを通じてお客さまのなりたい姿へとナビゲートしていくのです。

『出逢わせ』に必要な信頼関係の深め方

お買い物に立ち寄ってくださった初対面のお客さまと信頼関係を築くというのは、とても難しいことのように感じる方もいらっしゃるかもしれません。
でも、大丈夫。一気にいろいろやろうと思わなくてOKです。

ひとつずつを小さなステップに分けましたので、ちょっとずつ取り組んで、それを積み重ねていくと信頼関係は深まっていきますよ。

こちらにご紹介する「まりかの接客メソッド」では、このような5つのステップで、あなたができることを増やせるようにしています。

いかがでしょうか？『出逢わせ』に興味を持っていただけましたか？

次回からはこちらのステップをひとつずつ取り上げて、具体例と共にお伝えしていきたいと思います。どうぞお楽しみに！

山下万里香さんの著書

『スタイリストが教える お客さまをもっと素敵にする! 接客術』
お悩み別スタイリング処方箋。お客さまの「こうなりたい」を叶えるコーディネート術。信頼関係をつくる裏表のないコミュニケーション。お客さまの隠れた本音の見つけ方。―すぐに使えるテクニック満載!