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ファッション業界基礎知識

ブランド価値を守る「商標法」とそのメリット|Fashion Law for Beginners 法律編


前回のコラムでは、ファッションローの誕生の経緯や概要についてご紹介しましたが、これからはもう少し突っ込んだ形で、ファッションローとして位置づけられる法律について、お話しさせていただきます。

ブランドの信頼を保護する法律「商標法」

まず、みなさんは「ファッション」と聞くと何を思い浮かべますか?被服、鞄、サングラス、化粧品といった具体的な商品でしょうか。あるいは、よく行くお店のインテリアでしょうか。なかにはお気に入りのショップの店員さんの顔を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。さまざまな答えがあるかと思いますが、おそらくほとんどの方が、〇〇〇〇の鞄、や〇〇〇〇の銀座店といった具体的なブランド名も思い浮かべられたことでしょう。

それが、ルイ・ヴィトンやシャネルなどのラグジュアリーブランドであったり、ZARAやH&Mといったファストファッションブランド、ナイキやアディダスといったスポーツブランドかもしれません。そんな、今まさにみなさんが思い浮かべたブランド名を保護し、そのことを通じてブランドが持つ信頼(このブランドであればきっと品質はよいはずなど)を保護する法律として「商標法」や「不正競争防止法」という法律が存在します。みなさんが思い描いたブランドのイメージを維持しているといってもよいかもしれません。

今回のコラムでは、まず「商標法」を中心にご説明したいと思います。ブランド名やロゴマークが特許庁に登録されることによって、商標法により保護されますので、その具体的な手続きの流れや効果、事例などについてご紹介します。

まず、みなさんの関心が高いと思われる効果(メリット)ですが、ブランドの名称を商標登録することで、第三者による同一または似ているブランド名称の登録および使用を禁止することができます。つまり、似たようなブランド名を持つブランドの出現を止めることができ、世間に対して他社と混同することなく正しくブランドを認識してもらうことができるのです。

また、ブランド名にただ乗りする業者や、ブランド名を騙る偽物業者が現れた場合にも、法に則って名前の使用や商品の販売を止めることができます。ブランドを守るためには、まずブランド名を商標登録することがビジネスにおいて必須と言えるでしょう。

次に、ブランド名を登録するプロセスについてご説明します。ブランド名を思いついたときに最初に行うのが、「先行商標調査」と一般的に言われる、同じまたは似たブランド名称が登録されていないかを調べる調査です。似ているかどうかの判断は専門的な知見が必要なるので通常は弁理士に依頼しますが、特許庁が特許に関するデータベースを無料で公開しているので、自ら現在の登録状況を確認することも可能です。ブランドを立ち上げる際にはさまざまなコストがかかるものですから、まずは自ら調査して候補を絞り込んだ後、専門家に依頼するとよいかもしれません。同一名称を調べるくらいであれば簡単に調べることができます。

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特許庁の特許に関するデータベースを閲覧できる特許情報プラットホーム『J-PlatPat』。
プルダウンで「商標を探す」を選択→検索バーにブランド名候補を入力→検索ボタンをクリックすれば結果が表示されます。

ただし、すでに多くの名称やロゴマークが登録されており、新しい商標を登録することはけっして簡単なことではありません。登録がなくとも商品に関連する一般的な名前(例:化粧品のブランド名称に、「コスメ」)や、その産地・原材料等(ジーンズのブランド名称に「デニム」)をそのまま表すような名称だと、第三者の商品とを区別することができず、商標登録をして保護する必要性が乏しいと考えられるため、登録することは困難になります。

商標登録には緻密な事業計画も大切

商標登録の段階で検討する必要があるのが”どのような商品ラインナップを持つブランドにするか”です。商標は、一定の商品・サービスを指定して登録することが法律で定められています。それは、指定していない商品・サービスには権利が及ばない(第三者が自由に使用できる)ようにするためです。アパレルブランドであれば、一般的に第18類(鞄関係)、第25類(被服・靴関係)をカバーするように登録されていますので、調査をする場合も、これらの商品を対象とし商標調査を行うことになります。ただ、多彩な商品ラインナップをもつアパレルブランドなら、前記の商品群のみならず、香水・化粧品関係(第3類)、アイウェア関係(第9類)、アクセサリー関係(第14類)なども視野に入れる必要がありますし、最近では飲食物の提供(第43類)を行うブランドも見られます。ゆえに商標登録する際は、商標取得にかかる費用・事業計画を綿密に検討する必要があるのです。

そのような調査・検討を経て商標登録をすることができそうなブランド名称が決まったらいよいよ出願です。出願後、スムーズに審査が運べば8ヵ月程度で登録完了となりますが、例えば、審査途中にすでに登録された商標と似ていると判断された場合は、弁理士などを通じて反論し、反論が難しい場合は一部の商品を断念し、可能な商品について商標登録を進めます。

晴れて登録料を納付し登録が完了すれば、商標権として前で述べた効果(メリット)を得ることができます。

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ブランド名を登録するだけでは偽物業者の出現を防げない

商標登録が無事に済み、ブランドビジネスが軌道に乗ってくると、その過程で、”このブランドといえば、この商品”といえるような特徴的な商品が生まれてくることがあります。そのような際に注意をしなければいけないのが偽物の存在です。もちろん、商標登録をしていれば、正当に権利を行使し、偽物の販売を止めることや金銭的な賠償を求めることができます。しかし、そういった特徴的な商品は、その形状自体のニーズも高いため、元のブランド名を付さずに偽物が販売されることがあります。このような場合、ブランド名が付されていないので、ブランド名を商標登録するだけでは対策を打つことができません。そこで、そのようなトラブルに防ぐ法律として、物品の形状を登録し権利化する「意匠法」や「不正競争防止法」などがあります。詳細は、また次の機会にご紹介したいと思います。

では、ブランド名が付されないような場合に、商標法だけで形状対策ができないのかというと、そうではありません。一般的に認知されている必要性があるなど通常の商標登録より高いハードルが課されますが、商品形状自体やその一部も商標登録することができます。実際の登録例を見ていただいた方がイメージが湧きやすいかと思いますので、その一部をご紹介します。

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今回ご紹介した商標法という法分野は、長い歴史を持っていますし、古くからファッション分野での商標登録もされています。しかし、ファッションビジネス・クリエーターにとってより有益な活用方法はどんなものかという検討や研究は、今まさに積極的に取り組み始められたところです。今後も、ファッションビジネスに携わる人ならびにクリエーターが主人公であることを忘れず、この分野の検討や研究が進み、さらに発展していくことを願っています。

今回のコラム執筆者

MARK STYLER株式会社 法務部 課長|小川 徹さん

2016 年~2017 年 津田塾大学非常勤講師、知財学会会員・事務局、2012年よりMARK STYLER株式会社にて、契約業務、法律相談、商標の権利化、模倣品対応など、幅広く法務知的財産業務に従事。
 

Fashion Law Institute Japan

http://ip-edu.org/fashionlaw
知的財産研究教育財団に属する日本で最初のファッションローの研究を行う場。メンバーは国内外のファッションブランドにより構成され、研究員として弁護士等が参加。

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