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ファッション分野に特化した山本真祐子弁護士が解説!「ファッション・アパレル業界における法律の重要性」

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大手メゾンブランドから、国内アパレルブランドまで様々な法律の問題が取り上げられている昨今、様々な角度から「Fashion Law(ファッション・ロー)」の必要性が問われています。

知的財産権、著作権、労働者の抱える問題など、様々なファッション業界においても切り離せない「法律」について、ファッション分野に特化した山本真祐子弁護士に解説していただきます。第一回目となる今回は、そもそも何故ファッション業界においてなぜ法律が必要とされているのか?をテーマに、山本弁護士にファッション・アパレル業界と法律の関係についてお答えいただきます。

ファッション・アパレル業界と法律の関係とは?

−まず山本弁護士の専門分野について教えていただけますか?

所属する内田・鮫島法律事務所は、知的財産に関わる業務を中心に行っています。なかでも私は、ファッション関係を含むデザインやブランド保護(模倣品対策等)を重点的に取り扱っています。

−ファッション業界で今、法律が必要とされているのには、どういった背景があるのでしょうか。

ファッション業界における法律問題は多岐にわたります。

近年注目されているのは特にファッションデザインの法的保護であるように思いますが、これに留まらず、ブランドネームの法的保護・契約関係(ライセンス契約/製造委託契約/販売店契約/モデル契約/賃貸借契約/金銭消費貸借契約等多岐にわたります)・規制法関係(有害物質を含有する家庭用品の規制法/家庭用品品質表示法等)・労働問題・企業買収関連等・様々な法律問題が存在します。

これらの問題はこれまでも生じていたのですが、特にここ数年でファッションデザインの法的保護が注目されるようになりました。その大きな要因として、技術進歩による模倣の容易化、ファストファッションの台頭等が挙げられます。

アパレル商品はライフサイクルが短く展開商品数も多いことから、新しいデザインを保護する意匠権を取得して権利行使することは現実的ではありませんし、権利取得手続を要しない著作権による保護も基本的に実用品には及びにくいという状況があり、流行が大きく影響する等といった業界の特殊性と相まって模倣行為が横行しやすい状況にありました。しかし上記のような要因が契機となって、ファッション産業の投資回収の観点から、デザイン模倣行為への法的対応が注目されるようになっています。

海外と日本でのファッションローに対する意識の違い

−海外(ヨーロッパ、アメリカ)と日本でのファッションローに対する取り組み、意識の違いはありますか?

アメリカでは、2000年代から、法律を学ぶ大学院においてファッション分野に関わる法律を学ぶプログラムが用意されています。もっとも、その法制度において、ファッションデザインは日本以上に保護されにくいのが現状です。これに対しフランスでは、ファッションデザインが保護されやすい法制度となっています。このように各国毎に法制度に大きな差異があることも、ファッションローの難しいところです。

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ファッション業界で見られる知的財産権の問題は?

−ファッション業界特有の知的財産権の問題は?

ファッション業界では、デザインのみならずブランドネームも真似る、いわゆる「偽物」といわれる模倣品問題は昔からありましたし、これに対する商標権等による対応も行われてきたと思います。これに対して、デザインのみを真似て、ブランドネームは独自のものを付してある商品については、必ずしも法的な対応が行われてこなかったと思います。

その理由としては、先ほどお伝えしたように、意匠権による保護が現実的ではないこと、著作権による保護が及びづらいこと、そもそもデザイン模倣に対する権利意識が高くない業界であったこと、といった要因が挙げられます。もっとも、少なくとも日本においては、販売開始から3年間のデザイン模倣を規制する「不正競争防止法2条1項3号」という規制が存在します。

また、デザイン発表後6ヶ月以内であれば意匠出願をすることも可能なので、例えば展示会等で評判がよかった商品や出だしから売れ行きが好調な商品等については、デザイン発表後の意匠権取得を検討する余地がないわけではありません。

−ファッション業界でその規制や対策が使われた事例はありますか?

まず不正競争防止法2条1項3号の規制については、裁判で争われたケースも少なからずありますし、最近では昨年、スナイデルの製品についでデザイン模倣を行った企業の代表者が同法違反により逮捕されるといったニュースがありました。後者の「デザイン発表後の意匠出願」という対策は、数は多くないと思いますが、全く行われていないわけではありません。

デザイン模倣に対する権利意識の高まりから、今後はブランドネームを真似ないデザイン模倣に対しても積極的な法的対応がなされていく可能性があると思います。

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−アパレル企業は、今後どのように法律と関わっていく必要があるのでしょう。

これからは、ブランドネームを真似ないデザイン模倣についても意識が向いていくように思います。そのため、企業としては自らが模倣しないように注意を払うようになると共に、他社による模倣行為には厳しく対応していく流れになり得ます。

また、コンプライアンス意識の高まりも相まって、知的財産以外の法的問題にも注意が向いていくでしょう。

最近では、この4月から一部のアゾ染料に含まれる特定芳香族アミン24種について家庭用品規制法の対象に追加されること、今年の12月からJIS規格及び繊維製品品質表示規程の変更により洗濯表示が変わること等規制法関連でも大きな変化がありました。企業としては様々な法的問題を認識し、慎重に対応していく必要があるでしょう。

 

今回解説していただいたように、ファッション業界においても技術の進化、マーケットの多様化などにより益々法律との関係は深まっていきそうです。少なくともアパレル企業で働く人は、こういった規制について把握しておく必要があるでしょう。

そして次回からは、ファッション業界にまつわる法的疑問を解決する「お仕事・転職Q&A」で山本弁護士にご協力いただきます。皆さんの疑問・お悩みについても募集いたします。どうぞお楽しみに!

今回お話を伺った方

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山本真祐子弁護士

弁護士法人内田・鮫島法律事務所アソシエイト。デザイン・ブランド関連を中心とする知財法務を行っている。2015年、クリエイティブな文化活動を支援するために専門家NPO「Arts and Law」のメンバーを中心とするプロジェクト「Fashion and Law」に参画。執筆論文に「Fashion Law~不正競争防止法2条1項3号によるアパレルデザインの保護~」(特許ニュース2015年12月11日号、溝田宗司弁護士との共著)がある。

 

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