あなたは今の正確な年収を把握されていますか?「年収に交通費を含めて計算する?」「手取りを12ヶ月合算すれば年収?」……これらはどちらも間違った知識です。
転職をする際、必ず現在の年収の申告を求められると思いますが、そんな時に誤って年収を低く伝えてしまったら?企業側から提示される年収も自ずと低くなり、あなたの不利益になってしまう可能性も。転職は年収アップを目論むこともできる折角の機会ですから、誤りのない年収を申告して、損をしないようにしたいものです。今回は税理士法人イデアコンサルティングの税理士 大園昌典さんに、”正しいお金に関する知識”についてお伺いしました。
「手取り」は、ほとんどの場合「年収」より金額が小さくなる
ーまずは、年収の確認方法を教えて頂けますか?
誤った認識を持っていらっしゃる方が多いと思うのですが、「手取り金額の合算=年収」ではありません。
「手取り金額」とは一般的に、給与支給額+交通費-社会保険(健康保険、厚生年金、雇用保険、40歳以上の方は介護保険)-所得税-住民税をいいます。手取り金額は各種税金等(社会保険、所得税、住民税)が引かれたものになるため、手取りで年収を計算することは誤った方法です。
実際ご自身の口座に振り込まれる金額が、この「手取り」金額になりますので、手取り金額の年額が”自分の年収”であると勘違いされる方が多いのですが、これは間違いです。社会保険料や源泉所得税、その他の控除(住民税や積立金など)が引かれる前の会社から支給される「総支給額」が収入にあたりますので、これを1年分合算した上で、その他賞与などを加えた金額が、その方の年収になります。また、交通費が通勤手当として支給される場合が多いかと思いますが、年収には含まれません。
手取り額で年収を計算すると、ほとんどの場合で実際の年収額より低くなってしまうので、ご注意ください。
正確な年収は「給与所得の源泉徴収票」で確認
正しい年収の確認方法として、年に1回、12月か1月にお勤めの会社からより発行される「給与所得の源泉徴収票」を確認することをおすすめします。企業にお勤めの方であれば、必ずもらっているはずです。退職時にも忘れずにもらっておくようにしましょう。
この源泉徴収票の「支払金額(①)」の項目に記載されている金額が、年収となります。俗に「額面」と呼ばれるものです。社会保険料や源泉所得税、住民税などが差し引かれる前の金額で、通勤手当も非課税(税金がかからない)規定の取扱いを受けるものについては、この「支払金額」には含まれていません。
その他にも、
- 給与所得控除後の金額(②)・・・収入金額から計算される給与所得控除(※)を引いた金額
- 所得控除の額の合計額(③)・・・社会保険料・生命保険料・基礎控除などの控除合計金額
- 源泉徴収税額(④)・・・今年納める所得税の金額
などが確認できます。
※給与所得控除とは、所得税法上で定められているサラリーマンの必要経費にあたります。
年収金額が変わらなくても手取り金額が減っていっている。
―なるほど。では「年収は?」と聞かれた場合は源泉徴収票の「支払金額」を確認すれば良いのですね!ちなみに、意識せずとも引かれている税金ですが、最近徐々に割合が増えていると耳にするのですが、本当でしょうか。
厚生年金の保険料率が毎年徐々に増えていることに加え、平成25年から平成49年まで復興特別所得税も引かれてることになっています(所得税の2.1%)。つまり、所得の税率の変更や各種保険料率の引き上げによって、年収金額が変わらなくても、手取り金額が減っていってしまっているのが現状です。
もちろん、基本的に収入がアップすれば、税金の額も増えます。
- 給与支給額が増えると所得税は増額される
- 住民税は、前年の年収から計算する為、翌年から増額される
- 社会保険は標準報酬月額(4〜6月の報酬の平均額)により保険料が決定される
一定の要件を満たすと臨時改定もあります。
―年末調整でお金が戻ってくることがありますが、これは何の返金なのでしょうか?
年末調整とは、会社が毎月源泉徴収した所得税を1年間に収めるべき税額(上記の源泉徴収票にある「源泉徴収税額(④)」)と一致させる手続きをいいます。
源泉徴収した額よりも、計算された最終的な税額が上回れば、追加での支払いが必要になりますし、逆であれば還付金が発生します。また、生命保険、地震保険、住宅ローン等の支払いがある方などは控除証明書を提出すれば、控除が増えます。企業にお勤めのサラリーマンであれば、殆どの方に還付金が発生するかと思います。
因みに、年収2,000万円以上を超えている方は、会社で年末調整ができないので、2月15日~3月15日までに税務署に確定申告をする必要があります。
子供が増えると手取りが増える!?
―他に知っておくべきお金の知識はありますか?
よく聞かれる質問が2つあるので、お答えします。
「子供が増えると手取りが増えますか?」というご質問をよく頂きます。お子さんが生まれると、扶養控除が増える、つまり毎月の源泉徴収税額が少なくなるため「手取りが多くなる!」と思われる方が多くいらっしゃるのですが、その年の12月21日時点で15歳以下の扶養親族は、所得税の計算上、扶養親族には該当しませんので、手取り額に変化はありません。ただし、現在は扶養控除に替えて、児童手当が支給されています。(所得制限があります。)
副業をしている場合は、いくら以上で申告が必要?
また、副業をされている方から頂くご質問で「どのくらいの所得があった場合、申告が必要ですか?」というものもあります。
企業にお勤めの給与所得者のうち、副業で年に20万円以上の所得(収入から経費を差し引いた金額)がある方は、確定申告が必要となります。これは副収入(例えば:ネット売買やアフリエイト、マンション運営、セミナー講師など)で得た所得が該当します。副業で得た所得は給与所得と合わせて、翌年の住民税額に影響するため、その金額などから、勤め先に副業がバレてしまうことも。副業を禁じている企業にお勤めの方は、注意が必要です。
―ありがとうございました。
今回お話を聞かせてくれた方
※こちらの記事は2015年3月10日に公開されました。
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