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アパレル業界の労働人口低下問題を考える(2)−外国人労働者の活用−|【人材コンサルタント大野理恵さん】

アパレル業界の労働人口低下問題について考えるシリーズ。前回に引き続き、人材コンサルタントの大野理恵さんのインタビューをお届けします。

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海外から見た日本の労働環境の評価

−女性の活用に続き、アパレル企業が着目すべき層とは?

アパレル業界で一番課題となっているのが、外国人の活用です。在留外国人の人数を調べてみると、年々増化しており、今日本にいる外国人は全体で見ると270万人にもなります。そのうち220万人がアジア系で、圧倒的です。中国、韓国、次いでベトナム。そのうち在留女性は270万人中140万人に及びます。

学生ビザを持っている人でも、週に27時間は働けます。就労ビザや配偶者ビザ、永住ビザを持っている人は、日本人と同じように働くことができますから、単純に考えると労働力として取り込める条件は揃っています。

−現時点では、在留資格のある外国人労働者は派遣という選択がほとんどで、正社員登用はハードルが高いと感じ企業が多いようです。働く間口をもう広くする必要が企業側にあるのでしょうか。

外国人が日本の社会の中で活躍するための間口が狭いのは確かです。その理由のひとつとして、受け入れる側の企業のマインドで、まだまだ変えていける余地があるかと思います。

採用するのは在留資格を持っていて、日本人と結婚している外国人に限定するなど、持っているビザによって間口を狭めてしまう企業がまだまだあります。確かに、学生ビザやワーキングホリデーで滞在中の人だと、すぐに辞めてしまうのではないかというリスクが伴います。さらに外国の慣習や文化の違いなど、国籍によるイメージや先入観があって、なかなか受け入れに抵抗を感じてしまう企業もあります。

受け入れ側のマインドというところが、打ち破ることができないというのが、ここ2,3年強く感じていることです。少しずつ企業のマインドチェンジを図りながら受け入れ状況を整えていく必要はありますが、それだけではなく、受け入れを実践し、現場での反応だったり、何が起こったかということを体験していかないと状況は変わらないと思います

−外国人は日本で働きたいという意欲は高いのですか?

実は、先進国61か国の中で、日本がどれだけ魅力的な労働環境か?というアンケートがあります。すると結果は50位。理由は、もちろん色々ですが、グローバルレベルで見ると日本は働くのにあまり魅力的な国だと思われていない事実を知っておくべきだと思います。

人材確保というのももうグローバル競争になってきていますから、世界中の優秀な人を、いかに自社に取り込むかという当たり前の視点で採用を考えなくてはなりません。そうなった時に、国内の人材確保も苦労しているアパレル業界の企業が、どう動くべきかしっかり考えていかないといけないですよね。

−ますます競争が激しさを増しているのですね。

外国人を取り込むことにも、すごくいいことがありまして、あるイタリアの教授が調査をした結果があります。「多様な出身国の人達が集まっている地域と賃金の相関性」という調査です。

出身国の多様性がある州と、あと平均賃金の上昇率という相関性を調べたら、結果、多様性のある州がどんどん賃金が上がっているんですよ。外国人を取り込んでいくと、自分たちの仕事が無くなるとか、自分達のポジションが無くなるみたいな、マイナスな面ばかりに目が行ってしまいがちなんですが、多様なバックグラウンドを持っている人が入ってくることで、刺激や改革、変化というのが生まれます

それが、プラスに作用するということが言えると思います。

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2020年を見据えて問われる販売力

−東京オリンピック開催を見据えて、リテールの現場ではどんなことが求められていますか?

2016年は過去最高のインバウンド数で、約2400万人だったそうです。やはり圧倒的に中国人が多くて、次いで韓国人、台湾人と、東アジアからの訪日観光客が多いことがわかります。

販売の現場では、大多数を占める中国人をはじめとする他国の人、特に各国の人が日本に来た時に、アパレルショップに立ち寄って、どんなものを買いたいだろうか、彼らの好きなカラーにはどういう傾向があるのかなど、彼らの価値観に合わせた販売力が問われてくるはずです。

2020年までは訪日観光客数は増えていくとは思うので、それまでにいかに多様な、特にアジア圏のお客様に、自社の商品を買ってもらうかが、アパレル業界全体にとっても、各企業にとってもポイントになってくるでしょう。

−なるほど。外国人雇用に加え、国内の人材への教育も重要になってくるのですね。

語学力はあればなおさらですが、まずはコミュニケーションを取ろうという意識をきちんと持つことが大切です。会話にならないと接客は始まりません。「Hello」とか「How are you?」とか基本的な挨拶だけでも十分なのですが、まだ多くの販売員の方がそれすら恥ずかしいと感じているようです。アジア各国アパレル店舗では英語で気軽にコミュニケーションを取る販売員の方々が多いのに、日本はまだまだ遅れているなと痛感しています。

企業側に求められるのは新しい価値観を取り込む積極性

−今回お話を聞いて、アパレル業界の人材確保に向けて改善すべき課題がまだまだあることを感じました。

私が一方でポジティブに思うことが1つあります。長い間アパレル業界には女性がとても多いですが、マネージメント職は男性のほうが多い。ということは男性管理職の人たちは、ほかの業界に比べて、“女性の活かし方”というのを心得ているはずなんです

女性といっても思考性や行動傾向、価値観など男性とは若干違いがありますし、それをマネージメントできるということは、外国人のマネージメントにも応用できるのではないかと思うんです。企業側に求められることは、新たな価値観というのを積極的に取り込んでいきましょう、と。それは、自社の利益にきっとつながることですから。

深刻な人材不足が続くアパレル業界の問題解消は簡単なことではないのかもしれません。大切なのは働く側のマインドはもちろんのこと、受け入れる側である企業の体制を変えることが重要なポイントのようです。大野さんの解説は、課題を抱える業界全体に力強いメッセージとなるでしょう。

今回お話を聞かせてくれた方

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ウィンフィニティ 代表 大野理恵

「多様性を育み、企業と個人に活力を与える」ことをビジョンに掲げ、2013年株式会社ウィンフィニティを設立、教育コンサルティング事業を行う。多様性を育むための、キーパーソンである女性の活躍を後押しすべく、働く女性に向けたコーチングをこれまでに1000名以上行う。社会で活躍する女性が抱える悩みに直面し、一人でも多くの女性がより豊かな人生を過ごすためにサポートを行う。2015年ガールパワーに参画、専務理事に就任。

 

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