2016年11月7日(月)から3日間、日本最大のファッション展示会である、「ファッション ワールド 東京2016【秋】」が開催され、期間中、業界活性化&若手応援のための特別講演が行われました。
講演には日本のファッション業界を牽引する錚々たるメンバーが登壇。今回はファッション ディレクター源馬大輔さんの講演内容をレポート。常に新しい価値観を発信し続けてきた源馬さんが語る、ディレクションの極意とは?
sacai成長のキーマン、源馬大輔氏が語るディレクションの極意
源馬氏は、今や日本を代表する世界的ブランド「sacai(サカイ)」のクリエイティブ ディレクターとして、デザイナー阿部千登勢さんと共にブランドを成長させてきたキーマン的存在。講演はWWD 向千鶴編集長の進行により行われ、まずはsacaiのシグネチャーである“ハイブリッド”という言葉について語られました。
「sacaiはもともと2つの相反するものを一つにして表現する、というコンセプトでやってきました。それをメッセージとしてどう伝えるか、ということを以前から考えてきました。その一つの答えが“ハイブリッド”という言葉でした」。
源馬さんがsacaiに携わるようになったきっかけは、デザイナー阿部さんの「私は一流になりたい。だからそれを手伝って欲しい」という言葉。当時を振り返り、「僕自身、今までそういう仕事をしたことがなかったので自分にとってもチャンスだと思いました」と語ります。
また、立ち上げ当初は展示会のみのアプローチだったsacaiがショーを始めたことについては、「郷に入っては郷に従うじゃないですが、世界を目指すには世界と同じプラットフォームに乗らないと勝負できないと思いました。僕らはヨーロッパやアメリカと同じ位置で勝負がしたいと考えていましたので。世界で勝つには特別な存在にならなければならない、ユニークでなければならないというのは常にありました」と語り、ディレクションの重要性について話は進んでいきます。
100%伝えるためにはどう伝えるかを考えることが大事
「見せ方でものの見え方は大きく変わってしまいます。自分たちの洋服を100%見せたいと思ったらどう伝えるかを考えなければ伝えることはできません。どれだけプロダクトが最高でもブランドの背景が見えないと伝わらないのです。
例えば、ショーのルックブックはあくまでも事実。デザイナーが何を考えているかという“ムード”というのは、事実だけでは伝わりにくいです。その服がどういうコンセプトでつくられたものなのか。だから、そういう“ムード”が伝わるビジュアルブックをつくっているんです。
sacaiのショーでは、モデルがぐるぐると歩き回るランウェイをつくっています。これは、サカイの服が360度どこを見ても美しいデザインだから。服を見るときにまず目に入るシルエットが、どこから見ても見えるような演出をしています」。
120%のものが返ってくる。sacaiをつくる一流のチーム
2006年7月からクリエイティブディレクターとして関わっている源馬氏は、国内外の様々なスタッフと一緒にサカイの仕事をしてこられました。スタイリストのカール・テンプラー、ローバル・ブランド・ディレクターのアニータ・ボジシュコスカ、サウンド・イラストレーターのミシェル・ゴベール。さらには新たに展開をスタートさせたシューズラインのコラボレーションにはピエール・アルディ、バッグにはケイティ・ヒリアー。
「僕がこんなことがやりたいと伝えたら120%のものが返ってくる、そんな一流のチームがsacaiには揃っています」。
そう語る源馬さんの姿が印象的でした。まさに世界が注目するブランドにまで成長を遂げたsacaiが行ってきた実例は、これからグローバルで展開を考えるブランドにとって大きなヒントになるのではないでしょうか。
今回お伺いした主催団体
リード エグジビジョン ジャパン株式会社
日本最大の国際見本市主催会社として、 東京ビッグサイトや幕張メッセ等の大規模な展示会場で年間40分野142本の“超”大規模な国際見本市を定期開催。併催イベントとして、業界トップのセミナーや、店長・販売向けセミナー等を行う。
Text&Photo:Mio Takahashi(Fashion HR)