H3O Fashion Bureau(エイチスリーオー ファッションビュロー)のインタビュー
INTERVIEWインタビュー
これまで数多くの海外ブランドを日本で根付かせてきたショールーム「H3O Fashion bureau(以下、H3O)」。ブランドの成長を促すためにどんな役割をH3Oが担っているのでしょうか。また大切にしている仕事への思いなど、ディレクター、鈴木裕人さんにインタビューしました。
“ファッションブランドを磨き育てること”を会社の使命に
−H3Oとはどんな会社なのでしょうか?名前の由来は?
今年の4月でH3Oは10年を迎えました。日本人の私とオーストラリア人の2名で会社を立ち上げました。もともと日本の会社というよりはグローバルな会社にしたいという観点で、日本語の名前だと海外で通じないし、海外の難しい英単語では日本で浸透しないということで簡単な記号にしようと考えました。そこで“3”をテーマに考えて、オフィスのあった原宿と、表参道の3人の頭文字をとってH3Oにしました。H2Oだと水ですが、H3Oという元素の溶液は物事をきれいにして、磨くというものです。ファッション自体のブランドを磨き育てるという会社の使命と合っていたので、H3Oにしました。
−設立した頃から日本でブランドを育てていくことや、海外のブランドを日本で広めていこうということをやろうと思っていましたか?
会社を始める前、オーストラリアのブランドの日本のプレスイベントを手伝った際に、海外のブランドが日本でどのようにブランドを浸透させていったらいいのかわからないと相談を受けました。他にも同じような悩みを抱えるデザイナーが多いことに気づき、そういったデザイナーをサポートする会社をつくろうと考え、友人2人と力を出し合い会社設立という経緯になりました。
−実際にH3Oは、日本に進出したいブランドに対して何をする会社なのですか?
基本的にプレスをメインに行っています。プレスというのは、アタッシュ・ド・プレスとして、ブランドの広報宣伝活動をするということが第1点。そのブランドがまだ日本国内で認知が低い場合は、そのブランド自体をバイヤーさんに紹介してオーダーを取り付け、商品を納品するところまでも行っています。
−展示会も行うということなんですね。
展示会はプレスの展示会とセールスの展示会、2つのパターンで展示会を行っています。日本に商品が届き、その商品をショップに届けるところまで行うので、一般的にファッションの世界は、洋服を作るデザイナーの立場と、その商品を売る立場のショップがあると思いますが、H3Oはその間にあるすべての業務を担っています。
プレス、セールスすべてに精通する人材を育てていきたい
−オーストラリアのブランドをお手伝いするところから始まり、設立10年で、累計でどのくらいの数のブランドを手がけたのでしょうか。ブランドの事例があればお聞かせください。
10年間で、累計約100件近いブランドをサポートしてきました。そのなかで一番大きく成長したのは、タイのブランドで、スレトシス(Sretsis)というブランドです。私たちが初めてブランドに出合ったのは海外の展示会場で、その頃はまだ日本では3店舗ほどの取り扱いしかありませんでした。このブランドを日本でもっと認知度を広めたい、認知度を広めてセールスの数も増やしたいという思いがあり、まずはプレス活動からスタートしました。
ブランドのサンプルを各媒体に紹介して、その媒体を通じてお客さまの目に触れて、どんどんファンが増えるにつれて取り扱うショップの数も増えていきました。日本での販売ベースを構築できたので、フラッグシップショップを青山に出店し、メインのセールスをするまでになりました。サポートを始めて少しずつ展開が増え、ショップを自分たちで持つようになったところまでのお手伝いをした、H3Oのひとつ大きな事例だと思います。
−H3Oの仕事の、営業活動とPR活動の割合とは?
半々ですね。たとえばプレスを担当するといっても、プレスの担当も、セールスの展示会も手伝いますし、セールスの担当者もプレスの展示会時はプレスの接客もするので、ひとつの職務といっても、それだけやればいいということではなく、基本的に両方を理解してすべてのことに精通するような人材育成をしていきたいと考えています。
−担当はブランド軸で分かれるのでしょうか?
基本的にすべての社員がすべてのブランドを理解していることが前提なので、その理解をもとに接客をして、セールスを行っています。ただその商品の納品をするといった段階になったときには、担当のものがオーダーから店頭に並ぶまでのひとつの流れを自分で責任を持って行うという流れになります。
−セールスの職務内容は、展示会にお呼びし、展示会でアテンドするところからまでを一貫して手伝うのですね。PRの仕事内容は?
PRは展示会を企画して、メディア、スタイリスト、エディターの方を呼んで、商品のご紹介をします。展示会が終わったあとに、さっそくサンプルの貸し出しが始まるんですけど、ただ待っているだけではサンプルがスムーズに回らないので、雑誌の編集の季節の号に合わせてこのような特集はどうですか?というようなこちらからの提案もします。もしくはサンプルを持って編集部へ商品説明に行くこともあります。それに加えて東京ファッションウイークなどでランウェイショーの企画を行ったり、その商品が置かれているお店でのイベント企画などもプレス担当者の仕事のひとつです。
売ることよりも着てくれる人がハッピーになれるかが大切
−新しいブランドはどうやって開拓するのですか?
新しいブランドを開拓するのは2つ方法があります。ひとつは、毎日のようにいろんなブランドからアプローチのメールがあります。そういったなかから才能のあるブランドを探して、最終的にお互いにビジョンが合えば一緒に仕事をするという形になります。もうひとつが、実際にいろんな国に足を運び、いろんなリサーチをして、面白いと感じたブランドにアプローチするという方法です。
−H3Oで働くために英語は絶対条件でしょうか?
基本的に“コミュニケーションができること”を大切に考えています。私とジェイソン(H3Oディレクター)が会社をマネジメントしているので、ジェイソンとのコミュニケーションに英語は必要ですが、話す英語というのは、話しているなかで身につくこともあるので、流暢でなければ採用できないということではなく、英語も使える環境で仕事をして、成長したいという意欲のある方が理想です。
−設立者、マネジメントとして今後H3O社をどういう会社にしたいか、というビジョンについてお聞きできますか?
H3Oというのは、もともと才能のあるデザイナーを日本に根付かせるための会社として設立しました。我々がいつも心がけているのは、そのブランドにとって大切なことは何かを考えながら仕事をすることです。
どのようにして売れたらいいのかということも大事ですが、どのようなバイヤーに手にとってもらい販売してもらうか、最終的にはそれを実際に着てくれる方が本当にハッピーになるかというところに焦点を当てて、毎日仕事をしているつもりです。そういったことに実際にやる気を感じて、自分がデザイナーやブランドを育てるという仕事に自信とプライドを持ち働いていただける方をひとりでも多く増やして、最終的にはそれぞれの人が次のH3Oの世代を作っていくような会社、旅立ってそこでノウハウを持ち自分を開花させていけるような、そういった人々を育成する会社に育てていけたらいいなと思っています。
セールスやPR活動を通してブランドの成長を支えるH3O。ブランドに寄り添い、成長のカギを握るバイヤーやエディター、そして実際に店頭で商品を手に取る顧客のことまでも考え、そしてファッション業界に貢献したいという強いパッションを大切にする会社だということがわかりました。これからも彼らのチームによって、素晴らしいブランドの数々が世に送り出されることでしょう。